240メートルの誤算5【佐野玲於】

通知 ページ8

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俺は生まれてからずっと、嫉妬深い性格だった。
一度これだと決めたものは、なかなか手放せないし
他の誰かに触られるのも、嫌だった。

そうやって生きてきて、この歳になって
今度は欲まで出てきてしまった。
相手にも同じように思っていてほしい。

エゴでしかないって、分かってる。
壊れたおもちゃはゴミ箱にって
それが当たり前なのは、分かってる。
でも俺は違う。
むしろ壊れていてほしかった。
だって壊れたら、誰も寄り付かないから。




Aと再会して、一週間が過ぎた。
ついてないことに、朝まで撮影とかそんな日が続いて 満足いくほど会えてなくて

そんな中、今日は4日ぶりに会える。
いや、4日も長かったよ 俺にとっては。


21時すぎ
知り合いのショップに顔出してから、そのままメシに行こうとするメンさんの腕を振り払った。
大急ぎで家に帰り、地味なジャケットを羽織る。
ありきたりなスニーカー
よくいる大学生みたいなリュック。
マスクにキャップ。
これが俺の勝負服。


「もしもし、俺。」


マンション出ながら、Aに電話した。
携帯の向こうから、テレビの音がする。


『終わった？』
「終わった終わった。」
『お疲れさま。』
「ん。今から行くけどなんかいるもんある？」
『えっとー……大丈夫！今日お買い物して帰ったから。』
「そうなの？」
『バイト先のスーパーでお買い物したらね、全部1割引になるんだよ、いいでしょ。』
「へぇー。今度いこ。」
『だめだめ！バレたら大変。』


焦ったようなそんな口調に、思わず笑ってしまう。
俺と同じくらい心配性じゃん


「わかったわかった。」
『ほんとに来ちゃだめだよ。』
「わかったって。それより今日の晩飯なに？」
『あ、今日はねー親子丼にした。』
「うわ天才。」
『たまごふわふわだよ〜、あと5分で着くときに言って！』


歩いていくつもりだったけど
そんな話聞いちゃったらもう、タクシーに乗らざるを得ない。
了解って通話を切って、早速乗り込んだ。


言われた通り、5分前にラインする。
オッケーってスタンプ送られてきて、終始ニヤニヤな俺。
たまごふわふわか〜
参っちゃうな、Aとどっちがふわふわ？？
なんて、バカみたいに能天気なノロケ。
マスクしといてよかった、とか思ってた
そのとき、スマホが震えて。

通知を見て、背筋が凍った。


[ ずっと連絡ないから待ちきれずにごめん。Aちゃんとどうなった？ ]


さくらちゃんの存在
俺はまた、都合よく忘れてた。



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