240メートルの誤算3【佐野玲於】

さくらちゃん ページ47

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結局強引すぎる龍友くんに勝手にセッティングされて
仕事終わり、渋々店に行くことに。
けどまあ家帰ったら嫌でもAのこと思い出すし
ちょうど良かったのかもしれない。


「…遅れましたー。」

案内してもらった個室。
中には龍友くんと女の子ふたり。

「遅刻やで大遅刻。」
「お疲れさまです。」
「どうも……え、龍友くんメンさんは？」
「用事あるって。」
「はあ？」
「まあええやん、2対2で！な？」
「いやだからそれ合コン…」

俺が来る前にもう飲んじゃってた龍友くん
すでにご機嫌。
女の子ふたりは相変わらず可愛くて、まあ俺好みの顔ではある。
正面にいる子、あー確かこの子だ
あのとき俺に無駄なアドバイスくれた…

「彼女さんとどうなった？」

目が合った瞬間、早速キタ。
何飲む？とか、久しぶり、とかより先に
どうなった？ってね。
思わず笑いそうになる。
バカでしょ絶対。

「…別れましたね。」
「え！ほんとに？いつ？」
「ちょおさくらちゃんあんま突っ込まんといてあげて！ホヤホヤやねんから。」
「ホヤホヤ？」
「いや…まあ、昨日？昨日の夜っすね。」
「え、すっごいタイムリー…あっだから今日飲み会？じゃあ元気付けないとだね。」

ちげーわバーカ
誰が元気付けてほしいなんて頼んだよ
けど龍友くんの手前、あまり無愛想にするわけにもいかず、苦手なビジネススマイルで誤魔化す。
頬っぺたつりそう、既にいてえ。


さくらちゃん、ていうこの子は
ずっと俺のこと見て何か話してて
ムカついたからこっちもじぃって見つめ返したら、そんなに見ないでって小声で言ってくるみたいな

テーブルの下で足がちょっとだけ当たったとき
こっそり笑いかけてくるみたいな
まあ、そういう感じの子。


…全然俺、そういうの求めてないんだけど…
早く帰りてえ
ああでも帰ったら、また憂鬱な気分になるのか。
けどやっぱ
やっぱさあ

「玲於くん次どうする？」
「…んー、ハイボール。」
「あ、これわたし頼んだけどちょっと苦手で飲めなくて…ふたくちくらいしか飲んでないから、よかったら飲んでくれないかな。」

言いながら、グラスを俺の前に差し出した。
…Aはこんなことできないだろうな
でも、できないAが好きだから、それでいいんだけど。

「いいよ、それ飲むわ。」
「ありがとう。」

何でもない顔して会いに行ったら、怒られるかな。
けど、怒られてもいいから
何でもいいから。

そう考える俺を、さくらちゃんはまたじっと見つめてた。


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