汗 ページ3
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そのあと、Aはバニラのアイスを買って
俺は適当に、シャーベット買って
誰もいないから特別に、って、ふたりで食べながら帰った。
「ね、それ、ひとくちちょうだい。」
「…口開けて。」
「……おいしい！」
「前歯に当たったらキーンってなるけどね。」
「うん、なんか懐かしい感覚。」
「そ？」
「ちっちゃいとき、ママがお家でかき氷作ってくれて、お姉ちゃんとベランダで食べたの。」
「ふうん。」
「懐かしいなー…ママ、元気かなあ。」
「Aもうずっと実家帰ってなくね？」
「うん、…お姉ちゃんが優秀だから、なんか居づらくなっちゃった。」
へへって寂しそうに笑った横顔
…別にそんなの、気にしてないと思うけどな。AはAで色々頑張ってんだし。
なんて、今更言葉にするのは恥ずかしくて
アイス溶けてるよって誤魔化した。
また狭い部屋に帰ってきて
Aはすぐ、あついねーって窓を開けた。
俺は扇風機の電源を入れて
その前に胡座かいて、残りのシャーベットを食べる。
Aもとなりに座った。
部屋の電気、つけなくても
すぐ前に街灯があるから、その明かりでぼんやり、ちょうどいい。
蝉の鳴き声
生ぬるい夜風
熱帯夜
不意にキスしたら、一瞬目おっきく開けて
でもすぐ柔らかく、なに？って笑う。
「……早く食べて。」
「玲於くんのもまだ残ってるよ。」
「…もういい。」
「え？…せっかく買ったのに？」
もったいないよ、って
小さく呟きながら、バニラ またひとくち食べた。
Aの首元に汗が一筋落ちて
思わず手伸ばしてそれを拭うと、俺の指先に、Aの体温がそのまま伝わってきて
「…あつ。」
「……。」
「…体温高いね。」
「……ふつう…」
Aの手からカップ取り上げて 床に置いた。
キスしたら、そのたび甘い。
バニラの香りと、雰囲気と、全部が。
扇風機の風に揺られた前髪
Aのまん丸い瞳の中には、もう俺しか映ってなかった。
それが、どうしようもなく心地よかった。
初めて会ったあの夜を思い出す。
もう何回後悔したか分からない。
もっと良い出会いにしたかった。
ちゃんと正面から向き合って
そのワンピースかわいいね、とか
番号聞いてもいい？とか
そういう、普通の、でいいから。
1時間後には アイスは全部溶けていた。
ゴミ箱にカップを持ってくAの背中を、ベッドからぼおっと眺めてた。
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mugi(プロフ) - 自分に重なることが多すぎて、感情移入どころではなかったです。素敵な作品いつも有難うございます。 (2019年11月18日 10時) (
レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさんの作品大好きです！ (2019年11月3日 18時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
_myprince8(プロフ) - きなこさんの作品全て好きです。完結まで結びますように！っ (2019年11月3日 10時) (レス) id: bca9b2866b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 私最近の玲於くんの大人っぷりに寂しいって感じてしまい玲於くん見るの少し離れてたんです。だからきなこさんの思ってること同じで嬉しくなりました。今はちょこちょこ玲於くんを応援してるつもりです。笑1日の終わりに読むきなこさんの作品いつも楽しみです！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: f500b029ae (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - きなこさんの作品の中で一番好きです。人間味があって執着する玲於ちゃんや空回りながらも同じ思いの主人公ちゃん、すれ違いがもどかしいけど読み応えがあって本当に好きです。完結まで頑張ってください！ (2019年11月2日 9時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2019年10月10日 22時
