明日も来る ページ14
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「…Aちゃん、俺。」
その日の深夜
ぼおっと街灯の下を歩きながら
気付けばAちゃんに電話をかけていた。
はいって聞こえた声は震えてて。
…なに泣いてんだよ
バカじゃねーの、ほんと
バカだよ。
「…きみ、ほんとに俺のこと好きなんだね。」
『……ほんとに、好きだよ。』
「…ふ、バカじゃん。」
『……バカじゃない。』
ああ、会いたい
今すぐ。
「…俺、今日きみの顔忘れそうだから店行ったのに。ずっと下向いてたじゃん。」
『…うん。』
「…だから、忘れかけてる。忘れそう。」
『……忘れたらやだよ…』
「…じゃあどうしたらいいの。」
腕時計を見ると、もう23時を指していた。
…もう、23時？
…いや、まだ23時だ。会える。
言ってよ、Aちゃん
言ってくれたら、俺、すぐ行くから
たぶんこのときは、俺の方が必死だった。
「…ねえ、どうしたらいいの、俺。忘れちゃうよ、きみの顔。」
『……やだよ。』
「……やだよね。」
『……きて。』
「……ん？」
『……会いにきて。』
Aちゃんからその言葉が出た瞬間
なんか、じわーって体中に熱いものが溢れて
上がる口角を抑えながら、住所ラインに送ってって、冷静ぶった口調で伝え 通話を切った。
乗り込んだタクシー
窓から、いくつもの街灯を見上げる。
好きになっちゃったよ。
こんな夜に会いに行くほど、いつのまにか。
自分の立場を忘れたわけじゃない。
俺は芸能人で、あいつは一般人で
でも、そういうしがらみを取っ払ってでも、たぶん一緒にいたかった。
タクシーを降り、鳴らしたインターホン
ドアを開けた彼女は、俺の顔を見てまた泣いた。
泣き虫
なんで泣いてんだよ。
そのあとの会話も、繋いだ手が暖かかったことも
俺たちの世界すべてが
ふたりが同じ気持ちだってことを証明してた。
明日も来るって言ったのに
Aちゃんは、まだ帰らないでって泣きながら呟く。
俺の手握って、離そうとしない。
そのとき思った。
このコを笑顔にできるやつなんて、きっとこの世にたくさんいる。
でも、泣かせることができるのは、たぶん俺だけだ。
好きだよって言いたかった。
抱きしめたかったし、キスだってしたくてたまらなかった。
でも、最初の出会いを考えたら
簡単にそんなことできるわけなくて。
明日も来る
その約束を死んでも守りきることが、今の俺が彼女にあげられる、最大の愛情だった。
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mugi(プロフ) - 自分に重なることが多すぎて、感情移入どころではなかったです。素敵な作品いつも有難うございます。 (2019年11月18日 10時) (
レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさんの作品大好きです！ (2019年11月3日 18時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
_myprince8(プロフ) - きなこさんの作品全て好きです。完結まで結びますように！っ (2019年11月3日 10時) (レス) id: bca9b2866b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 私最近の玲於くんの大人っぷりに寂しいって感じてしまい玲於くん見るの少し離れてたんです。だからきなこさんの思ってること同じで嬉しくなりました。今はちょこちょこ玲於くんを応援してるつもりです。笑1日の終わりに読むきなこさんの作品いつも楽しみです！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: f500b029ae (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - きなこさんの作品の中で一番好きです。人間味があって執着する玲於ちゃんや空回りながらも同じ思いの主人公ちゃん、すれ違いがもどかしいけど読み応えがあって本当に好きです。完結まで頑張ってください！ (2019年11月2日 9時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2019年10月10日 22時
