赤信号 ページ45
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「ごめんね本当に、お金大丈夫?」
「全っ然大丈夫です!」
「ありがとう。」
なんと、本当に奢ってもらってしまった。
レジに行ったら、もうお会計終わってますとか言われて
びっくりして淳平くん見たら、Aさんがトイレ行ってる間に済ませました!なんて言うの。
そんな、ファミレスで?って驚いたけど
完璧な気遣いに、今度こそ頭が上がらない。
ふたりで並んで歩きながら
ぼおっと暗い空を見上げてみる。
…あ、飛行機だ
…玲於くん、いま何してるかな
メンディーさんの彼女も一緒って
いや、ていうか、昨日女のひとの匂いいっぱいつけて帰ってきて
それで今日から一週間近く会えないの?
それってかなりまずくない?
…まずいよ。かなり、まずいよ
突然不安でいっぱいになって
ラインしようかななんて思い始めた。
そんなとき
「……高知さんって、えっと…俺のバイト先のおじさんなんすけど、」
小さな声で、淳平くんがそう呟いて
「…あ、もしかして…わたしが傘を預けた方かな。」
「あ、そうっす、そのひと。…うん、高知さんから、傘受け取ったとき…俺、Aさん仕事忙しいのかなとか、もしかして出張かな、とか、勝手に色々理由つけてて。」
「……。」
「……でもやっぱ来てくんないし、Aさんは仲のいいお客さんなだけなはず なのに、なんでこんな気になんだろ、おかしいなって。」
何も答えられなくて、もちろん顔も見れなかった。
早く違う話題に変えたいのに、言葉が出てこない。
早くしなきゃ、もう 取り返しのつかないことに
「今日、待ち伏せしてよかったって思ってます。迷惑だってことは分かってましたけど、それでも来てよかった。」
「……淳平くん、」
「突然こんなこと言われて迷惑だと思うんですけど、…僕、Aさんのこと、好きになってるかもしれないです。」
赤信号で立ち止まる。
そのライトがわたしたちを照らしていて
伸びた影に、胸が痛くなった。
…わたしはこの子より年上で
まだ数回しか会ってなくて、お互いのこと 何も知らない。
わたしに付き合ってる人がいることも
この子は 何も、何も知らない。
それでも好きって言葉にしてしまう気持ちを、わたしも4年前 経験したから。
次がないかもって思ったら
なんでも言えちゃう。
もしここで別れて、もう二度と会えなくなったら
わたしはあのとき、生きていけなかった。
だから追いかけた。
それがわかるから
淳平くんのことだって、適当にあしらうなんてできるわけなかった。
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Tatsumi(プロフ) - 初めまして!ただいま、初恋一目惚れして、きなこさんの作品を読ませていただいています。こんなにしっくりくる玲於くんは初めてで、主人公ちゃんのキャラも好きで、今やきなこさんの作品や人間性に惚れ込んでいます。沢山の素敵な作品をありがとうございます! (2020年3月27日 10時) (レス) id: ec055f32e6 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - きなこさんのお話全部読んでます!!パスワードかかってるやつ昔読んだのですがまた読みたいので良ければパスワード教えて欲しいです! (2019年10月6日 12時) (レス) id: 5014defe8e (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - まってました!きなこさん!おかえりなさい!!!楽しみにしてます! (2019年10月2日 7時) (レス) id: b214cb1e69 (このIDを非表示/違反報告)
ChuRa(プロフ) - ハイスピード大歓迎です!きなこさんの書かれる佐野玲於くんが大好きです。更新楽しみにお待ちしております。 (2019年9月26日 12時) (レス) id: 6da9a38d0b (このIDを非表示/違反報告)
ゆりこ - 待ちきれないので毎日更新してください!!!! (2019年9月26日 1時) (レス) id: cb039e5484 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作成日時:2019年9月13日 21時