240メートルの誤算【佐野玲於】

いいもの？ ページ30

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次の日
漫画読みながら寝落ちしたせいで、アラームの設定かけ忘れて寝坊してしまった。
慌てて準備終わらせて、朝ごはんは我慢して家を飛び出る。

ああもう
玲於くんが来るって言ってたから、掃除しておきたかったのに
やっぱり昨日の夜にしとけばよかった。
洗濯物も朝干しちゃおうって思ってたのにな。

電車を目の前で乗り過ごし
結局いつもより20分も遅い出社になった。
ギリギリ遅刻ではなかったけど、下っ端がする朝の準備、先輩にさせてしまって
どうしよう、最悪だ。
残業もしないくせに朝もちゃんと来ないなんて
そんな陰口が聞こえる気がする。

重い気持ちでデスクについた。
慰めてくれる同期もいないなんて、わたし、たぶん人間として何かが欠けてるんだ。
ちゃんとしたいのに、できない。
頑張る気持ちが空回りして、迷惑ばかりかけてしまう。

…だから余計、理解できない。
なんでこんなわたしを、玲於くんは捨てないのか。



お昼
朝買う時間がなかったから、近くのコンビニに行って パンを買った。
デスクに戻り、書類を眺めながらちまちま食べる。
はやく帰りたいなーって思ったとき
ポケットに入れていた携帯が震えて

[ ひまー ]

玲於くんからのそんなライン

[ わたしも ]
[ 休憩中？ ]
[ うん ]
[ 俺は移動中ー ]
[ どこに？ ]
[ いや、今帰ってきてるとこ ]
[ へぇ。お疲れさま ]
[ 雨で撮影中止になってさ ]

雨？
ちらって表を覗いたら、いつのまにかほんとに降り出してた。
…洗濯しなくてよかった。

[ よかったね ]
[ まあね ]
[ じゃあもう終わりなの？ ]
[ うん。ジム行くけど ]
[ ふうん ]
[ 夜そっち行くね ]
[ うん ]
[ 今日いいもの持ってく ]

なに？って聞いたけど、内緒、って。
でも、わたしが絶対喜ぶものなんだって。

[ わかんないけど嬉しいな。今日やなことあったし ]
[ そうなの？ ]
[ うん、ちょっと ]
[ 愚痴聞いてやろっか ]
[ お願い ]
[ まかせろ ]

…はやく帰りたいな。
はやく帰って、玲於くんに会って、最近会えてなかったぶん、たくさんお喋りしたい。
今日寝坊しちゃったこととか、この前お風呂の中で3時間も寝ちゃってたこととか。
他にもたくさん。

[ じゃあまたあとで ]
[ うん ]

残りのパンを急いで口に詰め込んだ。
玲於くんに会えるって思ったら、それだけで元気になるよ。

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