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エントランスのドアが開いたのは、それから随分時間が経ってからだった

携帯家に置いてきたから、いま何時かわからなくて
連絡手段もなくて
フロアにしゃがみ込んだまま、ひとり
でも、どんなに時間がかかっても待ってようって思ってたから


玲於「…A、遅くなってごめん。」


そう声をかけられて
顔を上げた先
先輩、すごく穏やかな顔してた

安心して、涙出そうになる
…よかった、よかった、先輩 泣いてない
お母さんと、ちゃんと話できた?
大事に思ってること、伝えられた?
聞きたいこといっぱいあったけど
声を出したら泣いちゃいそうで、もう何もできなかった

そんなわたしの前に先輩もしゃがんで
同じ目線で、頭にぽんって手置かれて


玲於「……ありがとう。」


ゆっくり、そう伝えてくれる
我慢できずに、一粒だけ涙が落ちた
それをそっと指ですくった先輩は、いつもみたいに、ふはって笑って


玲於「お前って、ほんと泣き虫。」

A「…だって…」

玲於「俺までもらい泣きしちゃうから、やめてよ。」

A「……お母さんと、話せた…?」

玲於「……うん。」


それから、ゆっくり、全部教えてくれた

先輩がお母さんに伝えたのは
勝手に家を出る決断をしたの ずっと後悔してるってこと
それでもちゃんと学費払ってくれて 感謝してるってこと
もっと話したいことがいっぱいあったってこと
今からでもちゃんと親子になりたいってこと
だから今日、誕生日に会いにきたってこと

そして、お母さんに伝えられたのは


玲於「…自信がね、なかったんだって。」

A「…自信?」

玲於「うん。…若くして母親なってさ、オマケにシングルマザーで。…自分の母親からも見放されてたらしくて。」

A「…そうだったんだ。」

玲於「うん…俺のこと、ちゃんと育てられてるのか、ずっと自信がなかったんだって。だから俺が何しても口出しできなかったし、そんな自分が嫌だったって。」


…そっか
お母さんはひとりぼっちだったんだ
だから、息子まで離れていってしまうことに怯えて、何もできなかったんだ

お母さん、若くして母親になったって
もしかして、今のわたしと同じくらいの年だったりしたのかな
…それなら、気持ち 痛いほどわかる
自分一人で子どもを育てるなんて、そんなの自信なくなるに決まってる


玲於「…俺、嫌われてたわけじゃなかったんだ。」

A「…うん。」


安心したように 小さく微笑む先輩
その姿を見たら、また涙が出てきた

やっぱり→←大丈夫



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maki(プロフ) - 今まで何お話、読み返したら、やっぱり佐野先輩とうまくいってほしい。。(;_;)先輩!!何してんのーー!!! (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9583ac788f (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - ほんとに今一番大好きな小説です。全然話長くしていただいてかまいません!笑更新これからも楽しみにしていますので大変だと思いますが頑張ってくださいね! (2018年7月5日 23時) (レス) id: cb039e5484 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - きなこさんは更新率が高いことだけが取り柄だなんて、全然まったくそんなことないですよ(^^)きなこさんのお話を読むだけで元気になれます。いつもお話を読めること本当に嬉しいです。これからも応援しています。きなこさんの思ったまま書いてください! (2018年7月5日 23時) (レス) id: 49103f1761 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - さいくぅー (2018年7月5日 22時) (レス) id: 527ff0df55 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - もうきなこさんの伏線が楽しみすぎます!!楽しみにしてます!! (2018年7月5日 22時) (レス) id: c6b1080ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2018年6月16日 21時

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