ただいま、初恋【佐野玲於】

虚ろ ページ31

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次の日の学校
行きたくなかったけど、ママに心配かけたくなくて、渋々家を出た

10分歩いたら着く駅
あんまり人は多くない
電車が来るまであと5分、やっぱり学校行きたくないな、なんて考えながら ぼーっとホームに立ってた
そんなとき


玲於「おはよ、おチビちゃん。」


突然隣に立って
ぽんって、わたしの頭に手置いたひと
え、佐野先輩？
なんでここに？って、思ったけど
わたしたち、駅同じなんだった
今まで会わなかった方が、逆に凄いのかな
…でも今は、全然会いたくなかった


A「…おはようございます。」


顔見るのイヤで
俯きながら、答える
先輩のスニーカーが見えて、胸がギュって痛くなった
…だって、おっきいよ
わたしのパンプスより、ひとまわりも、ふたまわりもおっきい
…男のひとなんだ、わかってたけど、でも、男のひと


玲於「…ん？なんかあった？」

A「…え？」

玲於「…元気なくね？」


そんな声に、ちらって先輩を見上げる
眠そうな目
じぃって、わたしを見てて


A「…や、あの…元気です。元気…」

玲於「…そ？」

A「……て、ていうか、わたしおチビじゃないですもん、やめてください。」

玲於「いやつっこむの遅くね。笑」

A「もお、肘置きにするのもやめてください。」

玲於「いやいやだってほら、ちょうどいいとこに頭があるから。」

A「…佐野先輩ってホントいじわる。」


もっかい見上げたら
ふふって得意げに笑ってる
…わたしの、好きな顔

そのあと到着した電車、ふたりで乗り込んで
ドアのそばに並んで立った
わたしが手すり持てるように場所代わってくれたり、途中の駅で人が降りるとき、さり気なくわたしの前に立って 庇ってくれたり
そういうちっちゃな優しさが イヤになる程伝わってきて、なんか苦しい


ずっと気まずくて俯いてたけど
ちょっとだけ顔見たいなって思って、視線、上げてみる
どうせ携帯触ってるんだって思ってた先輩
いつもと少し違う、虚ろな、くすんだ目で、ぼおっと外を見てた

思わず背筋が伸びる
え、なんだろう、この空気感
なにを見てるの？
なにを考えてるの？
…何も伝わってこない、怖い


A「…先輩、」

玲於「……ん？」

A「…あ、えっと…いや…何も…」

玲於「…変なの。」


ふふって、小さく笑ったあと
いつもみたいに携帯触り始めた

…なんだったんだろ、さっきの
なんかすごく、悲しそうだったよ


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