青と紺のメモリー【剛×玲】

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Aside







A「…どうぞ。」


剛典「…ごめんね、ありがとう。」






6階の休憩室



缶コーヒーを手渡して

窓沿いのカウンター席にふたりで座った。






ひとりになんてしない

一方通行でもいいから、今だけでもいいから、そばにいたい







A「…岩田さん、元気ないかもって思ってたんです。」


剛典「…ほんと？」


A「はい。…だから、なんか心配で…」


剛典「…あー、カッコ悪いな。仕事でミスったくらいで。」






はあ、とひとつため息をついた岩田さんは

まっすぐ前を向いたまま 口を開いた







剛典「もうすぐ契約取れそうなとこがあったんだ。」


A「…はい、」


剛典「なかなかの大手で、これ取れたらだいぶデカくて…だから、部長にもすげー期待されてた。」






さっきのひとは、部長だったのかな


この資料のお届け先の、部長







剛典「…そこの社長がさ、すげーいい人だったんだよね。何回も食事連れてってくれたし、釣りも一緒に行った。だから、契約も大丈夫かなって。」


A「…そうだったんですね。」


剛典「うん。…でも、なかなかサインしてくんなくて…なんでかなって思ってたら、言われたんだ。社長の奥さんが病気で、治る見込みはほぼない状態だって。

…だから、新しい契約は取らずに…今の落ち着いた状態で過ごしたい。でも、社長はさ、この契約がどれだけ大きいものか分かってたんだ。だから、岩田くんの人柄に惹かれたから、って、サインしようとした。」







…ああ、この先は

聞かなくてもわかる








剛典「…だから、おれ、サインしなくていいですって、契約書破り捨てた。」







わたしは、本当にこの人が好き


心の底から、この人のこういうところが好き







剛典「…分かってんだ。会社っていう組織の中で働いてる人間として、俺はしちゃいけないことをした。取れるはずだった契約を、無駄にした。」


A「…はい、」


剛典「…商談に私情を持ち込むなんて、営業3年やってきてんのに…何してんだよ、俺…」






震える声でそう言いながら

カウンターに頭を抱えた岩田さん






…抱きしめたい


この、優しくて儚い彼を、わたしの全身で








A「…岩田さんがしたこと、わたしは、正しいと思います。」









…全部受け止める



この人がこの先どんな間違いを犯しても

わたしだけは、全部受け止める






そう決めた瞬間だった。





．

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