青と紺のメモリー【剛×玲】

たった1日で ページ12

Aside






その日の夕方



就業時間を目前にして突然任された事務の仕事に

坂根さんの文句を聞きながら パソコンと向き合っていた。





坂根「受付嬢なんてニコニコしてナンボの仕事なんだから、こんなんでストレス植え付けないでほしい。」


A「ニコニコしてナンボ…」


坂根「こんな姿外資の人に見られたら、一瞬で契約破棄だって。」


A「そんなに？」


坂根「だってほら、わたし今どんな顔してる？」


A「…おこりんぼ。」


坂根「…おこりんぼ？」


A「白雪姫のおこりんぼみたいな顔してます。」


坂根「…それ相当悪口じゃない？笑」






だってほんとに、って顔を上げたとき


目に入る。







エレベーターホールから出てくる、岩田さんの姿







どうしよう


目、合わせちゃっていいかな

でもじっと見てるなんて 変かな





そんなことをひとり考えているうちに

岩田さん、こっちに近づいてきて






必然的に、視線が交わる




逸らすにも逸らせなくて

結局、朝と同じ距離






剛典「お疲れさま。」


A「お疲れさまです、」


剛典「…相変わらず緊張してるね。笑」


A「…し、してないです…」







どうしよう、恥ずかしい

色々ダメかも






A「あ、あの…もう、お仕事終わったんですか？」


剛典「いや、これから一件クライアント先行って、そこから直帰。」


A「…クライアント先…」


剛典「知ってる？ここ。」





そう言って見せられた資料

そこに書いてあった名前は、確か…






A「…ここ、ウェブ制作の…」


剛典「そうそう！すげー、ほんとに記憶力いいね。笑」


A「ここの営業の方、釣りがお好きらしくて…その話でちょっと盛り上がったから。」


剛典「釣り？えーそうなんだ。」






いいこと聞いた、って笑った岩田さん


その笑顔がやっぱり素敵で

バレないように盗み見る





…綺麗







剛典「Aちゃんは？もう終わり？」


A「えっと、あと1時間くらいで…」


剛典「1時間かあ。お互いもうちょっとじゃん、頑張ろ。」


A「…はい、」


剛典「ん。じゃあそろそろ行くね。気をつけて帰って。」






最後にひとつ

バイバイ、って優しく笑って


ひとりスマートにビルを出て行く、その後ろ姿







…ああどうしよう


また、溜まってしまった






認めちゃいけないこの気持ちが


たった1日で、こんなに…






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