苦しい ページ22
亜嵐side
すぐに声かけたかったけど
学年主任もいるし、実習生の俺が出ていい幕じゃない気がして、とりあえず準備室に戻ることにした。
ドアを開けるとちょうど残ってた先生が帰るところで
お疲れ様ですってその姿を見送る。
ドアを閉めて、ついでにカーテンも閉めて
ひとりになった空間で、はあってため息。
…やっぱりダメだ
好きな人が苦しいと、こっちまで苦しくなる。
何もできない今の俺は
先生がドアを開けるのを、ただここで待っているしかなかった。
_______ガラッ
ドアが開いたのは、それからちょうど一時間が経った頃
顔を上げると、いつもみたいに優しく笑うA先生がいて。
亜嵐「…A先生、」
A「…さっき、いたよね、職員室前。」
亜嵐「…うん。」
そっと俺の隣に腰を下ろして
デスクに置いた自分の手を見つめながら、先生はゆっくりと口を開いた。
A「……菊池くんがね、学校辞めることになったの。通信制に切り替えるって。」
亜嵐「…え？」
A「…夏頃からずっと辞めたいって相談受けてて、わたし必死に引き止めてたんだけど…ダメだった。」
……そっか、
だからA先生は、あんなに菊池くんに構って
放課後も、ふたりで話して
…俺、なんにも分かってなかった。
A「…菊池くんね、小さい頃からずっと塾に行ってたらしくて、だからお友だちと放課後遊んだりとか、そういうの、分かんないんだって。」
亜嵐「…そのまま高校まで来ちゃったんだ。」
A「うん。…でも、それで今諦めちゃったら…小さい頃から頑張ってた勉強も意味なくなっちゃう。」
…A先生の葛藤
めちゃくちゃ分かるよ。
菊池くんが決めた道を応援したい気持ちもあるけど
でもそうすると、彼は色んなものを失くしてしまう。
教師として…担任として
どちらが正解かなんて、そんなの簡単に選べる二択じゃない。
A「…退学届持って来ましたって、今日、菊池くんのお母さんが来られたの。受け取ってくださいって、頭下げられちゃった。」
亜嵐「…そっか。」
A「……わたし、親じゃないから分かんなかったけど…自分の子どもが苦しんでる姿なんて、とても見てられないよね。…将来のことなんて、関係ないよね。」
白濱くんが来てる時にごめんねって
泣きそうな顔で、先生は最後にそう付け足した。
．
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ゆうき(プロフ) - すごく面白かったです。続編、書いてほしいです。 (2019年9月18日 21時) (
レス) id: 9e39fec3dc (このIDを非表示/違反報告)
わたし - 読ませていただきました！続編読んでみたいです！！占ツクでこのお話が一番大好きで定期的に読ませてもらってます！ありがとうございます！ (2018年10月5日 23時) (レス) id: 30aa3f8e55 (このIDを非表示/違反報告)
こぁお - うわあ、きなこさん、さすがです。 本当に面白かったです。 感動をありがとうございました。 (2018年2月7日 18時) (レス) id: bd05a1edf1 (このIDを非表示/違反報告)
実波 - 久しぶりに読みました。これ、続編ないんですか？笑 (2017年9月26日 7時) (レス) id: 6e3449be8e (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - しばらく開いていなかった占ツク。きなこさんの最初の作品から読ませていただいています。冬のお話を、夏に読んじゃいましたが、きなこさんの世界観はやっぱり素敵だなと思います。この作品以降のものも時間を見つけて全部読ませていただきます！ (2017年8月17日 14時) (レス) id: c2a087ffac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2017年2月1日 21時
