消えてよ ページ20
亜嵐side
そこから駅まで10分足らずの距離
最初は松木と国武の話なんかして盛り上がったけど
駅が近づくにつれて、A先生の口数が減ってくる。
…どうしたんだろ
亜嵐「…先生?」
A「…ん?」
亜嵐「……体調悪い?」
A「…ううん、平気。」
そう言いながら、髪を耳にかけた。
その時目に入った結婚指輪。
…話題、これしかないか。
亜嵐「…あのさ、…どうやって出会ったの?旦那と。」
A「…旦那さんと?」
亜嵐「うん。」
…知りたくないけど、知りたい
不思議な感覚
A「…初めて会ったのは、大学4年の春ごろかな。」
…大学4年の春って
先生が教育実習に来たの、3年の冬だよね?
…あれから全然経ってねえじゃん。
A「…そのときわたし、ちょっと色々あって、落ち込んじゃってて…だから、友だちが紹介してくれたの。」
亜嵐「…紹介?」
A「うん。…当時からずっと、その、お付き合いしてくれませんかって言われてたんだけど…なかなか決心つかなくて。」
亜嵐「…うん。」
A「…でも、社会人になって…先生になって、なんか、踏ん切りついたっていうか…諦め、ついたっていうか。…それで、お付き合いすることにしたの。」
…諦め?
その言葉が引っかかって、隣を歩くA先生に視線を送る。
先生はそんな俺に気付いて
でもすぐに、少し困った顔で目を逸らした。
……自意識過剰にはなりたくないけど
それって…
A「…それだけだよ、友だちの紹介で会ったの。」
亜嵐「…そっか。」
A「……白濱くんは、どんな人と結婚するのかな。」
聞こえたその小さな声に
思わず泣きそうになった。
…俺、こんなに好きなんだけどな
もう記憶の中だけの人だって思ってたけど
こんな形で再会して
それすらも、運命みたいに感じて
余計、離れられなくする。
でも
こんなに近くにいるのに、触れられない。
…それならいっそ、消えてくれたらいいのに
苦しいだけのこんな気持ち
…消えてよ、いらねえよ、俺
亜嵐「……先生、あのさ…」
A「…駅、ついた。…送ってくれてありがとう。」
亜嵐「…先生、」
A「…また明日ね。」
先生の震える声
ひとり取り残された俺は
胸に込み上げる熱いものを、必死に堪えることしかできなかった。
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ゆうき(プロフ) - すごく面白かったです。続編、書いてほしいです。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 9e39fec3dc (このIDを非表示/違反報告)
わたし - 読ませていただきました!続編読んでみたいです!!占ツクでこのお話が一番大好きで定期的に読ませてもらってます!ありがとうございます! (2018年10月5日 23時) (レス) id: 30aa3f8e55 (このIDを非表示/違反報告)
こぁお - うわあ、きなこさん、さすがです。 本当に面白かったです。 感動をありがとうございました。 (2018年2月7日 18時) (レス) id: bd05a1edf1 (このIDを非表示/違反報告)
実波 - 久しぶりに読みました。これ、続編ないんですか?笑 (2017年9月26日 7時) (レス) id: 6e3449be8e (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - しばらく開いていなかった占ツク。きなこさんの最初の作品から読ませていただいています。冬のお話を、夏に読んじゃいましたが、きなこさんの世界観はやっぱり素敵だなと思います。この作品以降のものも時間を見つけて全部読ませていただきます! (2017年8月17日 14時) (レス) id: c2a087ffac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作成日時:2017年2月1日 21時