運命のつくりかた【佐野玲於】

妥協 ページ12

Aside







小野「Aちゃーん、飲んでる？」







予想通り

きっかり2時間後。





顔を赤くさせ、完全に出来上がっちゃってる小野さんが近寄ってくる。



いつも小野さんなの。



酔うとスキンシップ多くなるし、

簡単に失礼なこと言っちゃうし、




わたしに、どこにでもいる女ってレッテルを貼ったのもこの人。





わたしのこと気に入ってくれてるのか、はたまた嫌いなのか…






だけど一応上司だから、良い顔してなきゃいけない。







A「飲んでますよ、楽しいです。」


小野「もーAちゃんっていっつも松木といるからさあ。お前向こう行ってこいよ。」





そう言いながら、隣にいた松木くんを他所へ追いやる。





A「松木くん、」


小野「松木はほっといてさ、ねえホラ飲もうよ。」





わたしのコップにたっぷりとお酒を注ぎ足し

乾杯を強制してくる小野さん。






いい年して結婚できないのは、きっとこういうのが原因だと思う。









「小野さん、Aちゃんばっかり絡みすぎですよ。」






周りでわたしたちを見てた方が助け舟出してくれたけど






小野「いーのいーの。こいつさあ、知ってる？みんな。意外に良い体つきしてんの。若いくせにねえ。」






って、肩に腕回してきて…




セクハラですよって笑いながら言ってくる人たちは、


きっと、小野さんの相手が自分じゃなくてよかったって思ってるんだ。






本気でわたしのこと心配してくれてる人なんて、いないよ。





松木くんだっていざという時はいつも傍観者だもん。



後から 大丈夫だった？って聞いてくるだけ。

そんなの意味ない。








A「お、小野さん。酔いすぎてるんじゃ…」







笑いながらその腕を外そうとするけど、

そんなこと許されなくて。








小野「ねえAちゃん彼氏いるの？」


A「か、彼氏…ですか？いないです…」


小野「いないよねえ。Aちゃんって男の気配しないもんねえ。」






そうですか？って笑ったけど

どういう意味で言ってるんだろう。




そんなに、ひとりぼっちに見える？








小野「俺さあ、もう40も後半でさあ。そろそろ結婚しなきゃやばいよねえ。」


A「…そう、ですね。」


小野「なんかもうこうなるとさあ、Aちゃんみたいな素朴な子でもいいかなあって…妥協？笑」


A「……妥協…」








この人にとってのわたしは、

皮肉の策でしかない。

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