恋人未満。《s.m》 (ページ29)

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森「んじゃ、帰るわ！ありがとな！」

貴「んーん。こちらこそ。
慎太郎元気になったみたいでよかった。」

朝、目が覚めると
いつものニコニコとした様子の慎太郎で
おはよう、と声をかけられ
あ、いつもの慎太郎だなって安心した。

軽い朝食を作ってくれた慎太郎に甘えつつ
2人で談笑しながら済ませ
帰り支度を終えた慎太郎を見送るために玄関へ。

森「……」

貴「ん？」

靴を履いて後はさよならだけなのに
私を見つめたまま動かなくなる慎太郎。

グイッ

貴「え、ちょ……！」

森「ごめん、今だけ」

慎太郎に抱きしめられ、
消え入りそうな声でそう言われたら
好きな人を拒絶できるほど私は強くなくて。

どきどきとうるさい心臓の音が
慎太郎に届きませんようにと密かに祈る。

森「そろそろ本気で終わらせてくるわ」

じゃ、また。と言い残し慎太郎は去っていった。

閉じたドアを見つめたままの私は
自分の頬をつねる。

貴「痛っ…てことは夢じゃない……？」

あの言葉ってそういうことだよね？

どうしよう。

凄く嬉しいかもしれない。

人の別れ話、喜んじゃいけないのかもしれないけど
こればっかりは許して欲しい。