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『私だから?』
「そう」
思わず立ち止まって振り向いた。そこには、にこにこと機嫌が良さそうに笑う白岩の顔。
「あ、やっとこっち向いた」
やった〜、と一人で喜ぶ白岩にため息がこぼれる。
『ずっと気になってたんだけど、いつから私のこと知ってたの?』
「いつから?」
『うん、初めて話したのってサッカーの試合の日だよね』
あー、と目を逸らす白岩を睨む。
「俺が一方的にAちゃんのこと見つけたことがある」
『え、いつ?』
「Aちゃんが純喜と話してる時。」
『 … それだけ?』
うん!と満面の笑みをみせる白岩。猫みたいだな、顔が。
「その時楽しそうに笑うAちゃんがなんか頭から離れなくて、純喜にお願いして試合に来てもらった」
『ほんとにそれだけ?』
耳を疑った。だって、私は印象に残るほどの人間でもない。白岩と直接話したわけでもない。
それなのに、こうして関わろうとする意味がやっぱり分からなかった。
『意味わかんないんだけど?』
「えー、分からないかなあ。簡単じゃん」
『はい?』
「一目惚れだよ。」
『 … 誰に?』
「Aちゃんに」
『誰が?』
「俺が!もう、言わせないでよ!」
ほっぺを膨らませた白岩に対して、みるみるうちに顔の熱が上がる私。きっと今、真っ赤になっているはずだ。
おかしい。鬱陶しいとか思っていたはずなのに。
思えば白岩と関わるようになってから、少しだけワクワクしていた自分もいた。
もちろん、一度も話さない日も何度かあった。そんな日はなんとなく気分が上がらなかった。下がることもなかったけど。
ただ、白岩の姿を見た日はなんとなく「今日も絡んでくるのかな」とウキウキしていたかもしれない。
『バッカじゃないの、物好きだね』
「見る目あるって言ってくれる?」
なんだか白岩の顔を見れなくて、足早に昇降口へ向かう。
当然のように、後ろを着いてくる足音。
大きく脈打つ心臓を落ち着かせようとぎゅっと胸元を握る。
勘違いのまま終わるはずの気持ちが、たぶん、この瞬間に 確信に変わってしまった。
タイムカプセルにしまった恋は(一成)→←プリンスは厄介(瑠姫)
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作者名:ヨカ | 作成日時:2021年8月22日 22時