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『うわ、重 … 』
両手に抱えているのは備品室に運ぶ大きな荷物。
運悪く担任に捕まった。あれ、デジャヴ … ？
『人使い荒いんだよなあ』
｢ほんま人使い荒いよな、ウチの担任｣
突然後ろから声をかけられる。振り向く前に、声の主が目の前にひょこっと顔を見せた。
｢また雑用任されたん？持つで、ほら｣
『ちょ、大平くん、悪いよそんな』
｢ええから｣
有無を言わさず手に持っていた荷物を取られた。私の手に残っているのは小さな備品の入っている箱のみ。
どこに持っていけばいいん？とキョロキョロする大平くんに備品室だと伝えると、足早に歩き始めた。
明らかに重い箱のはずなのに軽々しく持つ、その大きな背中に着いていく。
｢Aちゃんさ、今日俺らのこと喋っとったやろ｣
『うそ、聞こえてた？』
｢ちょっとだけな、たぶん俺だけ聞こえてた。だからそっち向いたら たまたまAちゃんと目合ってんけど｣
だからあの時、目が合ったのか。ほっと胸を撫で下ろすが、ひとつ重大なことに気がついた。
『え、じゃあ会話の内容も聞こえてた … ？』
｢少しだけな、推しがどうのって｣
『 … いちばん聞かれたくなかったところ』
｢別にええやん｣と笑う大平くん。よくないよ、恥ずかしいもん。挨拶はするもののさほど接点のない私なんかに推しと言われてどう思うのだろう。
『あー、大平くん。あの、ほんとごめんね』
｢ん？何が？｣
『大平くんが推しとか、勝手に話盛り上がっちゃって』
｢え、Aちゃんの推しって俺なん？｣
『え？』
｢いや、そこまで詳しく話聞こえてなかったで｣
その場の空気が凍りつく。わたわたと焦る私と、おかしそうに笑う大平くん。もういやだ、穴があったら頭まで入りたい。
｢俺が推しなんや｣
『もうやだ、消えたい。ほんとごめん』
｢なんで謝るん、嬉しいで｣
備品室に入って荷物を置く。本当は今すぐにでも逃げ出したいが、手伝ってもらった以上彼を置いて逃げるわけにはいかない。
目も合わせられないほど恥ずかしい。そんな私をからかうように大平くんは私の顔を覗き込んだ。
｢推しから昇格できるように頑張るわ｣
『え、昇格 … ？』
｢ん、こっちの話｣
微笑むその表情に、また胸がドキッと跳ねる。
『あの、大平くん』
これがもし、"恋"ならば
『連絡先、交換しませんか』
推しなんかじゃ、終わらせたくない。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
