生きる恋を、大きくなる愛を【短編集】 (ページ25)

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回る日々のオアシス(蓮) ページ25

『おはよう』
｢おはよう、時間ぴったりやね｣

よく晴れた休日、久しぶりに休みが被ったので蓮とデートの約束をした。

会社員とダンスのインストラクターじゃ、生活リズムが結構違う。会社員はある程度仕事量は決まっているしスケジュール通りの生活を行えるが、蓮は違う。突然寝る暇もないほどの忙しさに襲われたり、よく変わるスケジュールに対応できたりする蓮は本当にすごい。毎日お疲れ様です。

最近は特に忙しいらしい。有名なグループの担当を担うようになり、より一層多忙な毎日を送っている蓮がこうやって貴重な休日を私との時間に割いてくれるのは嬉しい半面、少しだけ申し訳なさを感じる。

『蓮、本当に今日おでかけしてよかったの？』

いつの間にかさりげなく繋がれた手をきゅっと握る。
私の問いに、蓮の頭の上にははてなマークが浮かんでいた。

｢Aと出かけたいって言ったのは俺よ？｣
『まあそうだけど』
｢もしかしてデート嫌やった？疲れとった？｣

不安そうに私を見つめる瞳が、心を撃ち抜く。どうしてこの人は、一見怖いお兄さんなのにこんなにも可愛くて抱きしめたくなるような人なのだろう。

子猫のような揺れる瞳に、一瞬頭がクラっとした。

『嫌じゃないよ、むしろ嬉しい』
｢なら何でそんなこと聞くと？｣
『蓮は忙しいから、てっきり休日は家で一日中寝ていたいと思ったの。だからデート誘ってくれたの嬉しいんだけど、蓮の疲れ取れるか心配で … 』
｢もうっ、Aはなんも分かっとらん｣

突然立ち止まった蓮は私のほっぺを両手で優しく挟む。むにゅっと押される頬の圧で、口が上手く動かない。

『にゃにするの』
｢俺はAと一緒なら外でも家でも超体力回復するの！Aと過ごすことに意味があるんよ｣

分かった？と言う蓮に縦に首を降ると、そっと両手を離してまた手を握られる。

そっか、そうだよね。私も、蓮と過ごす時間があるから忙しい日々も乗り切れるんだよ。あなたも同じだったんだね。嬉しいなあ。

『蓮が可愛すぎてつらい、別の意味で疲れちゃうよ』
｢ … 可愛いは嬉しくないんやけど｣
『ふふ、ごめんね』
｢あ、今日の夜俺んち寄らん？｣
『うん、いいよ』

｢ふたりだけでゆっくり過ごす時間も大事やけん、そん時めいっぱい甘えてもいい？｣
『仕方ないなあ』

蓮が心休める場所が私なら、いつだって抱きしめるしいつだって子守唄を歌うよ。