君のためなら全て無罪(翔也) ページ22
乱れた服を、意識が朦朧した中で整える。
昼間は子供達の元気いっぱいの声で溢れかえるこの公園も、この時間は人の影ひとつない。
放課後遅くまで残っていた私に声をかけてくれたのは副担任だった。
＿＿ ｢もう遅いから乗って行きなさい｣
車を順調に走らせていた途中、近くに面白い物があるから寄っていこうと連れられたのは人気のない公園だった。
そのまま公衆トイレへ連れ込まれ、抑え込まれ、抵抗も虚しくされるがまま。
あの気持ち悪い感覚を思い出すたびに吐きそうになる。身体を這う手の感触も、中をかき乱す感触も全部全部嫌になるほど鮮明に全身にこびりついて離れない。
汚れてしまった。初めてを奪われた。私の身体はあの人によってぐちゃぐちゃになった。
フラフラになりながら外に出る。
『はは、もうやだ、しにたい』
驚くほど乾いた笑い声は私のものだった。同時に溢れる涙は止まらない。落ちてくる粒を拭う気力さえなかった。
近くにあったベンチに力なく腰をおろす。
『しにたい、きたない』
震える身体をぎゅっと縮める。自身を抱きしめて、声を殺して泣いた。
その時、目の前からザザッと砂利を踏む音が聞こえた。反射的に顔を上げる。
｢A … 、だよね？｣
『しょーや … ？なんで、ここに』
｢おばさんからAが連絡なしに帰ってこないって聞いて 探しに来た。Aに連絡しても出てくれないし。｣
そこには少しだけ息を切らした翔也がいた。
どうしてこの人はこんな時でも私の目の前に現れてくれるのだろう。
そっと引き寄せられ、翔也の胸の中に収まる。
｢大丈夫、僕がいるよ｣
『翔也 … っ』
｢ゆっくりでいいから、ね？何があったか話してみて｣
ぽんぽんと背中を叩くリズムが私を少しずつ落ち着かせる。
ぽつぽつと話し始める私の言葉に、翔也は手を握ったまま耳を傾けた。
｢守ってあげられなくてごめん｣
『翔也が謝ることじゃないの、ねえ、翔也まで泣かないでよ』
｢辛かったね、ひとりでよく耐えたね。僕がAを守るから、これからは安心して。｣
月に照らされる翔也の顔に影がさす。
光を一切受け付けない翔也の瞳。とても美しくて、恐ろしかった。
その数日後、副担任が通り魔にあったと聞いた。防犯カメラのない場所での犯行で、犯人は特定できていないらしい。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
