生きる恋を、大きくなる愛を【短編集】 (ページ2)

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柔らかい太陽はお好き(純喜) ページ2

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｢なあA、それいつまでやるん｣
『もう少しで終わるよ、待ってて。』
｢明日でもええやん｣
『明日は2人でゆっくりするって約束でしょ？今日中に終わらせたいの』

今度、社内のプレゼンで使う資料の下書きをする私に、ソファの上でまだかまだかと駄々をこねる純喜のこんな姿はきっと誰も想像できない。

営業部の新エースと期待されている純喜。性格も明るくて親しみやすい。

社内の後輩からは｢河野先輩って素敵だよね｣なんて声も度々聞こえるくらいに人気者。

我ながら、よくこんな素敵な彼氏をゲットしたなと思う。

お風呂も済ませたスウェット姿の純喜は社内で見るよりずっと幼く見える。

こんなに変わるものなのかね。

『眠いなら寝てていいよ。』
｢んー｣
『ほら、もう寝そうじゃん。』

外では元気いっぱい、むしろ元気すぎるくらいに元気な純喜は家に入った途端たちまちそのスイッチがオフになる。

猫みたいに、どこか気ままでふわふわしている。

ソファから手を伸ばし、私の髪をそっと掬う純喜はそのままうとうとし始めたままついには喋らなくなった。

『 … 寝ちゃった？』

パソコンのキーボードを打つ手を止めて、後ろを向く。

夢の世界へ入ってしまった純喜の頭を、そっと撫でてみた。

暖かいなあ。この体温が、私は好き。

たまに、考える。

どうして私と居てくれるのだろう。

仕事だって、並大抵のことはできるが特別優秀なわけではない。

昔から、特別頭が良かったわけでもない。

どこか頭一つ抜けた特別な才能があるわけでもない。

そんな私に、いつかくれた『俺にとってお前だけが特別なんやで、せやから、俺の前では気を張らんで、そのままのAでいてほしい。』という言葉は、私の心の宝箱に大切にしまってある。

街の中にいれば、その風景に紛れてしまうほど目立たない私を見つけてくれたこの人を、どうにか離したくないと必死だった。

必死だった私に、彼はそのままの私でいてほしいと言った。

彼の後ろを追いかけていたつもりの私に、隣にいてほしいと言った。

すやすやと眠る彼の頬に、そっとキスをする。

夢の中でも、私と笑ってくれていればいいな。

明日は、家でゆっくりごろごろして過ごそうか。