昔からずっと ページ3
Aside
“マイキーが死んだ”
私にはそう聞こえた。嘘だと思いたくても、佐野万次郎が全てである春千夜がそんな嘘を言うはずがない。その疑いは直ぐに晴れたが、それと同時に明司さんが佐野万次郎が今何処にいるのかを問う。春千夜は微かな声で、隣の寝室だと答える。他の幹部たちは直ぐに向かう中、私はその場に残り、春千夜の傍に駆け寄る。春千夜、とその名を呼べば、生きる希望を無くしたような瞳と目が合う。私は咄嗟に彼を抱き締めた。
『大丈夫、私がいる。私がいるよ』
「…俺にとって、マイキーが全てだったんだ」
マイキーだけが、と最後の言葉を振り絞ったようにそう言う彼は、私を離してワインが入っている瓶が置いてあるテーブルまで歩いて行く。何をするのかと彼を見てると、春千夜はその瓶をテーブルに叩きつけ、その破片を自分の首に当てた。私は全てを察し、必死に彼を止める。瓶を割る音を聞きつけて来たのか、九井と鶴蝶も部屋に戻ってきて、一緒に春千夜を止めた。しかし、どう止めても彼は死ぬ事を諦めなかった。結局はその後部屋に戻ってきた竜胆の関節技によってそれは治まる。
倒れる春千夜を横に、私は竜胆にお礼を言うと、「コイツ、そこに寝かせてやって」とソファを指さして頼まれた。私は鶴蝶と一緒に春千夜をソファに寝かす。彼が起きるまで、私は一度佐野万次郎に会いに行った。
部屋に入ると、一気に死の独特の臭いがして、そこには血だらけで眠っている佐野万次郎がいた。私は彼を東卍時代から知っている。面識もあったし、彼はとても強い人間だった。あの春千夜を手駒に取れる人間に出会えたのは初めてだったから、私自身も彼になら春千夜を任せられると思って海外に引っ越した。
けど、帰ってきた時にはもう全てが遅かった。春千夜は訳の分からないクスリ漬けの毎日で、髪もド派手に染めていた。信頼していた佐野万次郎も、犯罪組織の首領で。私がいない間に、悪い方向へとどんどん幼馴染みは進んでいた。
『私、アンタがずっと嫌いだったよ』
私の大切な幼馴染みを、ついでに私も、こんな世界に巻き込んで。春千夜はずっとアンタを尊敬してた。何よりも優先して生きてきた。私が春千夜にしてきた事を、全部アンタに注いでた。それは、愛をも超える勢いで。それでも、アンタならってずっと我慢してた。なのに、それなのに何でアンタは、そんな奴を置いて一人で先に逝ってしまったのか。私から春千夜を奪っておいて、どうして。
今となってはもう届かない無意味な感情が、私の中でグルグルと回っていた。
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ひめ☆そら(プロフ) - 悠さん» ありがとうございます!私も梵天ifは見たことないなぁ…と思いながら作らせて頂きました!最後までどうぞよろしくお願い致します! (2021年9月3日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 梵天でこういったifみたことなかったので楽しみです!更新待ってますね!!! (2021年9月3日 19時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
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