解散したあの日 ページ5
Aside
「今日をもって東京卍會は解散する!」
『…』
あの日のことは、今でも欠けることなく覚えている。
・
「俺と別れろ」
『え?嫌だけど』
「何で?」
『いやこっちが何で?私何かした?』
東卍が解散した日。隊員や隊長、副総長の皆が帰った後、私だけがその場に残されて、階段に座りながら、佐野に別れ話を持ちかけられていた。勿論私には別れる理由が無く、反対する。しかしそれでも佐野は別れてほしい、と何度も私に催促する。私にはその意図が分からなかった。
『…私の事、もう嫌いになったの?』
「そんな訳ないだろ。愛してる」
『じゃあ何で?』
「でも俺の隣にいたら、お前は幸せになれない」
佐野は、まるで未来の自分を知っているかのような口振りでそう言った。佐野の隣にいたら幸せになれない?そんなの佐野が決めることじゃない。私にとっての幸せは、彼の隣に居ることだから。これから先の未来に、私の隣に佐野が居ない方がよっぽど辛い。
『やだ。絶対やだ』
「A、お願い」
『私は、佐野の隣にいたい』
「…」
彼は何も言わずに私の事を抱き締める。この温もりが、私は大好きだ。ずっとこのままこうしていたい。私の生きていく未来に彼がいないのなら、もう大人にならなくてもいい。このまま死んでもいい。それくらい大好きなのに。
「お前の事守れなくてごめんな」
『…いつも守ってくれてるじゃん』
「幸せにしてやれなくてごめんな」
『…今もずっと幸せだよ』
「A」
とどめを刺すように、愛おしいその声が私の名を呼ぶ。私はもう涙で顔がぐちょぐちょだった。けど、頑張って彼の目を見る。視線が交わり、私たちはキスをする。何度も何度も、角度を変えて。
『私は佐野を忘れられない』
「忘れんなよ。ずっと俺だけ想っとけ」
そして、またキスをする。
ずるい。「別れろ」なんて言うくせに、「忘れるな」なんて。
「これで俺の事、忘れなくなるだろ」
『じゃあ、ずっと傍にいて』
「…ごめんな」
それが、私と佐野が最後に交わした会話だった。
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エリザベス女王 - う、、、目から滝が、、、!武道のタイムリープで幸せになってるといいですねぇ、、、✨三途君の恋が、、、あの裏には恋心があったなんて、、、⁈伏線回収上手すぎです‼︎素敵な小説ありがとうございました! (2022年7月29日 19時) (レス) @page47 id: c75fcc9307 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ち ゆ。さん» ちゆたん…!!こちらこそ読んでくれてありがとう( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ ) (2021年10月30日 16時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ち ゆ。(プロフ) - 最初から最後まで感情が揺さぶられて毎度ページを開く度にドキドキしまくった…(><)ラストの方ほんとにしんどくて心臓きゅってなった(;;)辛いけど綺麗な終わり方しててとても感動しました!素敵な作品をありがとう! (2021年10月30日 12時) (レス) id: 7bb8e59749 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ゴリラの末裔さん» お返事遅くなってしまい申し訳ございませんっ!勿体ないお言葉…!!ありがとうございます!!! (2021年10月13日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの末裔 - 神はここにいた、、、、、 (2021年10月10日 23時) (レス) @page47 id: 566df7a38f (このIDを非表示/違反報告)
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