【佐野万次郎】呪いのような口付けを

私利私欲 ページ33

Aside







それから私は、彼を自分の家へと招き、タイムリープについての全てを聞いた。武道は、ヒナタのために何度も過去と現代を行き来して未来を変えていたこと。必ず佐野が悪の道へと行ってしまうこと。つい先日行われたパーの結婚式でまた現代に戻ってきたこと。そして、どの未来でも必ず私は佐野の手によって殺されているということ。武道の話によると、私が生きているのはこの現代(みらい)だけらしい。







『このこと知ってるのは？』

「ヒナと千冬とドラケンくんと…マイキーくんです」

『…そっか。
だからあの日、アイツは私を突き放したんだね』







だから、あんな事を言ったんだね。







「あの、さっき一虎くんと話をしてたんです。マイキーくんに会って話そうって」

『へぇ、一虎がね』

「俺が、絶対にマイキーくんを助けてみせます。だから、二人がまた一緒に笑ってるところ、見せてください」

『…』







武道はそう言うと、「それじゃあそろそろ帰りますね！」と言って帰っていった。私も玄関まで見送り、その後はリビングに戻りソファに座る。







『…俺が救う、か。輝いてるなぁ武道は』







佐野に会わなくなって、もう一年が経つ。どうして私の前に現れなくなったのか検討がついた。“彼(たけみち)”だ。彼が帰ってくることを知っていたからだ。

佐野はきっと、武道が自分を探し始めると悟った。だから繋がりのある私から離れた。自分の情報が漏れないように。武道は紛うことなきヒーローだ。ヒロインであるヒナタを助けて、未来を変えた。そして武道は佐野をも救おうとしている。


私はどうだ？一度でも彼を救おうと思ったことがあっただろうか。私は彼の隣にいることを望んでいただけ。共に堕ちていくことを選択しようともした。結局は自分の私利私欲のために行動していただけなのだ。







(…私じゃ、ダメなんだ)







私じゃ佐野を救えない。
私に、彼を救う資格はどこにもない。

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