お代は。 ページ29
Aside
本当にここの料理を奢ってくれた蘭ちゃんは、先程話していたワインもお土産で渡してくれた。その間、私の頭の片隅には未だハテナマークが所々に浮かんでいる。再びシースルーエレベーターに乗り、外の景色を堪能する。蘭ちゃんは「また連れてってやるから慣れろよ」と言って頭を撫でた。今日、何度彼に頭を撫でられただろう。撫でられた部分がジンジンと熱い。ロビーに到着し、この綺麗な赤い絨毯とシャンデリアともお別れだ。私は少し名残惜さそうにビルを出た。車に乗り込み、一息着く。何だか別次元に居るような空間だった。運転席に蘭ちゃんも乗り、車は動き出す。
そして私は頭に浮かぶハテナマークの答えを知ろうと、蘭ちゃんの名前を呼んだ。
『ねぇ、なんかその…交換条件みたいなのないの？』
「え？なになに？何のこと？」
『その、竜胆さんの事、好きなの内緒にしてくれる条件みたいなの』
私が少し照れくさそうに言うと、蘭ちゃんは「え？何？もしかしてそうゆうの期待してた？」とニヤニヤしながら私を見た。私は顔を赤くしながら「そうじゃないけど！！蘭ちゃんならありえるかなって！！」と必死になって返すと、「しねぇよそんなの」とただ一言そう言った。じゃあ、と私は次に疑問に思った事を彼に投げかける。
「蘭ちゃん、助けたお代…とか何とかって言ってたけど、私今日何も蘭ちゃんにしてあげれてないよ？」
「は〜？もう十分してるけど」
『え？』
「お前と久しぶりにデート出来たじゃん。それがお代な」
そう言う蘭ちゃんに、私はただ彼の横顔を見る事しか出来なかった。正直、蘭ちゃん的にはどう思っているのだろう。元恋人が、今度は自分の弟に恋をしているのだ。言ってしまえば私たちは“過去”の関係であり、“今”となれば普通の…友人？だ(久しぶりに会ったけど)。蘭ちゃんも特に気にして無さそうだし、私もきっと気にしなくていいのだろう。
私は今、竜胆さんが好き。それだけでいい。
自分の中で決算を付けていると、ちょうど車は私のマンション前に止まる。私は「ありがとう」とお礼を言って車を降りると、車の窓を開けた。私は気になって顔を覗かせると、「竜胆のどこが好きなの？」と聞いてきた。私は迷うことなく“笑顔”と、そう答えると、蘭ちゃんは納得したような顔をして「俺も」と言って笑った。そして今度こそ別れの挨拶を告げると、蘭ちゃんは行ってしまった。
(ありがとう、蘭ちゃん)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひめ☆そら(プロフ) - マンゴーさん» ありがとうございます！！続編でもよろしくお願い致します！！ (2021年9月11日 23時) (
レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - なるさん» 返信が遅くなってしまってすみません！！そう言って頂けてとても嬉しいです！続編でもよろしくお願い致します！ (2021年9月11日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
マンゴー - 続編おめでとうございます！！これからも頑張ってください。応援してます！！ (2021年9月10日 18時) (レス) id: 32d06b4eaf (このIDを非表示/違反報告)
なる - 続編おめでとうございます！！とっても嬉しいです！！ひめ☆そらさんの描く竜胆がいつも尊くて好きです！引き続き応援させて頂きます！！ (2021年9月10日 5時) (レス) id: ec50fd9b43 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - りかこさん» わー！！そう言って頂けてとても嬉しいですっ！続編でもこの作品をよろしくお願いします！！ (2021年9月9日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
