第8章 望んでいないお尋ね者 ページ26
私がこの館に来てからおおよそ2週間が経過したある日の事。
普通の人間として生活していたのなら味わう事の無い刺激的でもありながら楽しい毎日を過ごしていた。
最初の三日間ぐらいは彼らの一挙一動に戸惑いはしたものの、慣れてしまえば早いもので、親や周りの人間の元で暮らしているのとでは全然違っており、寧ろこちらの生活のほうが楽しく平和に暮らせていた。
センラさんがよく使用すると言う書庫に足を踏み入れ、何か読める本はないかと本棚を物色すること数十分。
「人間と化け物の小さな恋」と題された、人間でも読めるような小説があったので少しの暇潰しにはなるかと手にした。
その周辺にも何か無いかと探索してみると、どうやら人間に読めるような本はその辺りにあるようで、次の本を手に取った瞬間。
ドゴォッ、と派手な音を立てて、天井が一気に崩れ落ちた。
「ぅおあっ!?」
可愛らしい驚き方も出来ずにビクリと肩を揺らして音のした方向を振り返ると、魑魅魍魎の化け物達がうじゃうじゃと気味悪く存在していた。
「ニ、ニゲ、ニンゲン、…ア"ガ、ヴヴゥ……、」
「ひっ、」
引きつったような声をあげて、近くにあった脚立の後ろに隠れる。
脚立の横には、きっと本を取るために使われるであろう長い棒があったので、少しもの護身になればとそれを手に取り構える。
気味の悪いうじゃうじゃとした化け物は大半が化け物とも言えぬような原型を留めていない姿のものあった。
そんな中にはミイラやゾンビ等も居て、綺麗な化け物と言えば、見た所ヴァンパイアや魔法使い、死神と言った所だった。
ジリジリと男性らしきヴァンパイアがにじり寄って来る。
奥歯がカチカチと音を立てて震え出す。
「…ゃ、誰か、やだ…、」
そんな私の願いなんて、情のない化け物からすれば何ともないものであり、寧ろ興奮を覚えさせる材料と成り果ててしまう。
生憎あの4人はそれぞれ用事がある、と魔界に行っていた。
近況報告や武器の調達、食料調達に買い物を、ときっと今頃忙しいのだろう。
私も忙しいと言うより死にかけと言う方が正しいか。
「やァ、お嬢さん。少しばかり痛いかもしれないが、そんなのほんの一瞬さ。だからコッチへ来るといい」
薄気味悪い笑みを浮かべながら私に差し出してきた手は、いつものあの4人の安心できる手とは違っていた。
「く、来るな!」
「そうかい。それなら、私から行くんだがねェ!」
そして私は前にセンラさんから言われたから言葉を思い出した。
___「人間が居る所を狙って他のアホな化け物共が襲いに来るんですよ」
623人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴの(プロフ) - いやぁーー!!好きですぅぅぅ(泣)正体不明、天才歌い手シリーズの方も、いつも楽しく読ませていただいています!最新、無理しなくていいですが、密かに待ってます!! (2019年7月14日 15時) (レス) id: c64bb1fc21 (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - とにかく最高すぎて好きです!!!!! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - うらたさんとセンラさんがかっこよすぎて過呼吸になりかけましたごちそうさまです!!!フワリと大きな袖で包まれるって…!!!!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙もう呼吸止まった瞬間でしたよええ!!!最高すぎて評価10押したのに既に投票していますって出るんですよ!!!?! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - 口にする辺りあh((( 流石だなってなったし志麻さん何気に夢主ちゃんのこと、あの、怖がるだろ的なこと言っててア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ってなったしいやもうほんと好きすぎて好きすぎてヤバいです(語彙力低下)続き楽しみにしてますごちそうさまです (2019年1月25日 4時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - ア゙ア゙ア゙好きですさかたんが走り回って夢主ちゃん探しに行ってそれ止めようとセンラさん追いかけてその後志麻さん怒ってうらたさんが思ったことハッキリ言う構図が…もう…あの、机に手をめっちゃバンバンするくらい悶えましたごちそうさまですそんでさかたん禁句を (2019年1月25日 4時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ