【d!】愛憎のカトラリー【短編集】 (ページ5)

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好きって言って/shorn by碧@青海苔ページ5

「あー、今日も忙しかった。」
伸びをしながら会社を出て通っている飲み屋へ、今日も上司に対する不満を呟きながら夜道を歩く。冷たい風が頰を撫でると身体が震えた。
「あ、A」
「お、シャオロン。どうした？」
背後から声をかけられ、振り返るとそこには同僚であり、恋人であるシャオロンが立っていた。
「いや、えっとその…良かったら一緒に飲まへん？あ、別に嫌やったらええんやけど…」
目を若干逸らせながら私に誘いをかける。
何これ可愛い。
「別に構わないよ。じゃあ、私の行きつけの店に行こうか。ついでに私の愚痴も聞いてよね」
そう、笑って返すと彼はパァっと飼い主を見つけた仔犬のような笑顔を浮かべた。思わず頭を撫でそうになるが堪えて道を案内し始める。

店に着き、早速ビールを頼むとすぐに愚痴が始まる。
「さて…なんかさぁ、上の仕事私に全部回ってきててさ他の仕事もあるのにさそんなん自分でやれよ！って思わないし？何あのクソ上司。一回殴ってやりたい」
「あー！あの人かぁ…あの人は俺も仕事丸投げされたなぁ…新人で右も左も分からない時期に仕事押し付けてさ、流石の俺でもアレはきつかった」
「シャオロンもそうなんだ！分かるよね！でさー…」

彼は酒に弱く、ビールを一杯飲んだだけで顔を真っ赤にしていた。
呂律が回らず訳の分からない事を言う彼を見てやはり可愛いと思ってしまった。

酔った勢いというやつだろうか。
頭を撫でた後に堪らずに抱きしめてしまった。

あー、実家の犬を思い出す

しばらくモフモフしていると彼は流石に恥ずかしく感じたのか離れていってしまった。
少ししょんぼりしていると彼は私の隣にチョコンと座り擦り寄る。

犬か！猫か！可愛いな！
私の彼氏の可愛さに悶えながら会計を済ませて歩いて家に帰る。

「A…あんな…俺の事好き？」
「当たり前でしょ。何言ってんのよ。」
「ん…そっか…」

寝息を立てながら私に体重をかける。
こうやって酔ってる時にしか言ってくれないんだから…好きってちゃんと言ってよね。