２ 秘密 ページ3
和 side
ゆっくりとドアノブの開けて、中に入ると、そこはBarのようだった。
でも、あるのはカウンター席だけで、あとは机も椅子もなく、奥に一台グランドピアノが置かれていた。
「こんな時間にお客さんが来るなんて珍しい」
和「えっと…ここって…」
さっきまでいなかったはずなのに、カウンターには一人の男がいた。
「あ、おいらは、バイトなんだけどさ」
和「バイト？」
「そ。バイト。だから、何にも知らないけど。まぁ、あえていえばBar的なね」
「適当なこと言わないでよ、智くん」
「あ、翔くん。だって、説明のしようがないだろ」
翔くんと呼ばれたその人は、たぶん、俺が今まで会ってきた人の中で、断トツできれいな人だった。
和「あの…」
智「あー、おいらは大野智！この店のアルバイト店員です」
和「あ、はい」
なんで、自己紹介をするんだと思ったけれど、でも、大野さんの柔らかな雰囲気を感じて、どうでもよくなった。
翔「あ、俺は櫻井翔。この店の一応オーナーです」
と、彼は微笑んだ。
花が咲く。
この人の笑い方はそんな風に思えた。
何かに例えるとか得意ではないけど、この人の微笑みだけは、
ほんとうに、まるで、花が咲いたようだった。
儚く、それでも懸命に花びらを咲かせる花のように
この人は笑った。
翔「なにか、悲しいことがあったんだね」
和「え…」
翔「ほら、」
彼は花のように笑って、俺に手を差し出した。
和「え？…」
翔「一人じゃ踊れないから」
和「おどる？…」
翔「うん」
俺は、言いようのない気持ちになった。
なにかがこみ上げてくるような、そんな気持ち。
もう、なんだか、分からなくて、そっと彼の手を握った。
智「あぁ…おちたな…」
大野という人のそのつぶやきも、俺の耳には届かなかった。
続く (更新停止中)
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作者名：しょうの | 作成日時：2017年6月23日 21時
