深愛モラトリアム【2】 (ページ13)

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　『私は本当に…紫耀が大好きだよ』

大好き…大好きなの…

でもね…母の話を聞いて
自分の想いを相手に押し付けることだけが
愛なんじゃないってことを知ったんだ

私は母みたいに
大切な人を守れる人になりたい

母にとって、それが私だったように
私にとっての大切な人は紫耀なんだ

　『だから公開前の映画の宣伝が終わったら
　私は…名古屋に帰るね』

紫「……え？」

紫耀がそれを望むなら
これが私の果たせる最後の愛情

大好きだから…

あなたの為だと強がらせて欲しい

記者に詰め寄られた時みたいに
心の震えが現れるように指先が痺れ
目の前の柵を強く握りしめた

こうでもしないと震えどころか
離れたくないと心の中の弱さが
今にも逃げ出してしまいそうだった

だけど…

　『勝手に会いに来てごめんなさい
　これからはテレビで…』

紫「………帰さない」

　『……え？』

聞こえた言葉に驚き
彼の顔を見上げれば
私の視界の全部に紫耀の顔が映り
息つく間もなく唇が重なった

キスシーンの前に拒まれたキス
あの時は覚悟をして目を閉じたけれど
突然の出来事に今は
目を閉じることすら出来ない

　『……しょっ…』

啄むように離れた温もり
このキスの意味を知りたくて
すぐに彼の名前を呼ぼうとしたのに

もう一度、重ねられた唇は
今度はその隙間から紫耀の熱が入り込み
優しく口の中を触れてゆく

止まらないキスに
息が苦しくて堪らないはずなのに
まだこの時間を終わらせたくない気持ちで
柵から離れた私の両手は
いつの間にか紫耀のシャツを
どこにも行かないで…と、握りしめていた

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