深愛モラトリアム【2】 (ページ14)

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紫「……苦しい？」

初めての深いキス
呼吸を乱していた私に対して
紫耀は切なそうな声で聞いた

紫「でも…これが俺のAへの愛だから」

　『…え？』

紫「７年前…こうやって…ううん…
　これ以上に俺はAを
　愛したくて仕方が無かったんだ」

　『………７年前？』

紫「Aが大切で守りたいはずなのに
　めちゃくちゃに愛したくなる衝動を
　止められなくなっていた…そのせいで
　傷付けて苦しめてしまうんじゃないかと
　考えたら怖くて逃げ出したんだ」

　『…それが居なくなった理由？』

紫「………そうだよ」

知りたかった真実

紫耀が居なくなった理由は
私を嫌いになった訳じゃなかったんだ

　『………嫌われたのかと…思ってた』

紫「そうなれたら楽なのに
　どれだけ時間を掛けても
　 Aへの気持ちは変わらなかった」

　『……本当？だってキスシーンも
　止めてくれなかったじゃない？
　私…ファーストキスだったんだよ』

紫耀は申し訳なさそうに視線を逸らせる

紫「Aのファーストキスは…俺だよ」

　『……紫耀が？』

紫「施設に居る頃、眠っているAに
　俺は何度もキスをした…ごめん」

　『………知らなかった』

紫「キスシーンの前にファーストキスを
　大切にしているんだと知ったら
　やっぱり俺は最低なことをしたんだって
　好きでいちゃいけない気がした」

　『だから…冷たくしたの？』

紫「……本当にごめん」

私のファーストキスは岸さんだと思っていた

岸さんが嫌いな訳じゃない
ただファーストキスが仕事だと思うと
どこかで消化しきれない感情があったんだ

だけど…違った…

…私のファーストキスは
大好きな紫耀だったんだね

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