深愛モラトリアム【2】 (ページ11)

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58 深愛ページ11

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あれからちょうど一週間
私と紫耀は都心から離れた
見晴らしの良い高台に居た

　『初めまして…お母さん』

紫耀の仕事が早く終わる日を選び
母が眠る場所へとやって来たんだ

子供の頃、一緒に探すと
言っていたからなのか
紫耀が本当に付いて来てくれたことに
驚きと昔はこれが当たり前だったんだなと
変わってしまった現実に悲しくなる

　『産んでくれてありがとう
　私これからはお母さんに
　恥じない生き方をして行きたい』

亡くなった母と同じ歳
生きるはずだったこの先の人生を
母の分まで私はしっかりと生きて行くよ

　『見守っていてね、お母さん』

母の名前が刻まれたお墓に向かい
伝えたかったことを話し終えると
隣に居る紫耀へと視線を移す

紫「俺は十分話したよ、Aは？」

　『私も話せた
　紫耀は何を話したの？』

紫「秘密、そろそろ行こうか」

　『うん、付いて来てくれてありがとう』

高台から長い階段を降りて
また駐車場へと向かう

最近の二人の時間は
どこか重苦しいものだったけれど
今日の紫耀はとても穏やかに見えた

車に戻って来ると紫耀が助手席に回る

すぐにドアを開けてくれようとしたけれど
私はそんな彼を呼び止めた

　『紫耀、少し話がしたいの…良い？』

紫「…うん、良いよ」

彼の穏やかだった顔に微かに緊張が混ざる

　

眺めの良いところにある駐車場は
夕焼けに包まれて私に背を向けた紫耀は
腕を上げ体を伸ばしながら
その美しい景色に溶け込んだ

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