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…悲しそうな顔でした。
わかっていたのなら、余計に辛いでしょう。
身近にいた人が、いなくなるのですから。
西澤さんが、涙を浮かべながら、
「…誰…ですか…?私…協力、しますから…神田さんを振る野郎は、ぶっ飛ばしてやるからよ…!」
「裏が出てますよ、西澤さん。…残念ながら、私の恋は叶いませんし、西澤さんにとっては、それでいいものですから」
その言葉で察したのか、西澤さんは、驚いたような顔で私を見ました。
少し、俯いて…怒ったような口調で、言いました。
「そんな人、いませんよ…友達の…神田さんの命が最優先に決まってるじゃないですか…!神田さんの命を捨てる事なんて…できるわけ、ないじゃないですか!」
西澤さんの髪が、変化し…
目が吊り上がりました。
「俺だけが幸せな未来なんて、必要無い。神田さんがいなくなるくらいなら…こんな恋、捨ててやるよ」
「…西澤さん…裏桃華さん…」
じゃあな、頑張れよ。
そう言いながら、西澤さん…裏桃華さんは、去っていきました。
きっと、察してくれたのでしょう。
私が…日向くんに、好意を向けていることを。
…チャンスは、今しかありません。
私は、日向くんに向き直りました。
日向くんは、何が起こったのかわからない表情で、西澤さんの後ろ姿を見つめていました。
私は、日向くんの顔を見ながら…人生最大の勇気を出して、その2文字を呟きました。
「…好き」
「…え?」
「表情、小さな仕草、それら全てが、魅力的なものに思えた。
西澤さんは、私の想いに気づいて、去ってくれた。
…私は、その気遣いを、無駄にする気はない。
改めて、日向くん。貴方のことが好きです。
素の私が嫌いなら、嫌いのままで構わない。ただ…返事は、2週間以内に、してほしいの」
私は、初めて“素”を出した。
人生最後だし、これでいいかと、投げやりな気持ちで。
日向くんは、少し赤い顔で、こちらを見つめてた。
…穴があるなら、入りたいなあ…
私は、真っ赤になった顔を抑えながら、
「い、いきなり言われてもわけわかんないよね、ごめんね、日向くん!ていうか素が出すぎてるというか、今まで作ってて悪かったというか、なんていうか、その、また明日ぁぁぁ!」
少し早口になりながらも、そう伝えた。
そして、走り出そうとした瞬間…
…腕を、掴まれた。
あの日、あの時の掴み方と一緒で、ドキッとして、恥ずかしくて…
日向くんの顔を、見れないでいた。
そんな私に、日向くんは…
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