67◇羽生くん視点 ページ17
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「ういーっす、お邪魔しま〜す」
1時間後、昌磨と他2人が着くと3人だったリビングは一層賑やかになる。
「あれ、なんか昌磨くん綺麗じゃない?」
後輩の言葉に、昌磨を見れば髪はしっかりセットされていた。
「え?ああ、直前まで外で撮影してた。雑誌か何かの」
「昌磨くん、何の撮影かも把握してないの?」
「う〜ん……そこはあんまり……」
「ぜいたく〜!オファーあるだけで羨ましいのに!まぁ、そんな昌磨くんは置いといて。今回優勝するのは俺だけどね!」
そんな後輩の言葉に、それまで黙って2人の話を聞いていた他の子たちも参戦して
「俺らも鍛えて来たよ!なぁ?」
「え〜、親指で腕立てとかしてきた?」
「鍛えたって、指じゃなくて腕のほうね!めっちゃやり込んだから、今回は俺手強いっすよ?」
そんな楽しげに笑い合う後輩たち4人につられて笑っていると、昌磨と目が合った。
「V2はさせないよ。覚悟してね、ゆづくん」
そんな挑戦的な強い眼差しに一瞬どきっとしたけれど、
「覚悟? それこっちの台詞だから。負けるつもりないよ?」
気乗りしないなんて思ってたくせに、挑発されると持ち前の負けず嫌いが顔を出す。
特に、昌磨には負けたくない。
それが純粋に勝負事としての感情だけだとは、正直言えない。
Aと昌磨、いつの間にそこまで親しくなったんだろう。
昌磨とAは、マイペースなところが似てる。
でもどちらも我が道を行く性格だから、どの辺で気が合っているのか、ずっと不思議だった。
そんな2人の間にある空気感に、下らない疎外感を感じてるんだろうか?
なんだよそれ、馬鹿ばかしい。
そう思うのに、渦巻く思いに翻弄されて、苛立つ心が昌磨へと向かう。
向けられた背中を軽く睨んでしまっている自分に気付いて溜め息が出た。
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作者名:mirin | 作成日時:2021年3月8日 0時