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「っぁ…っ」



声にならない叫び声。
照らす夕日も、揺れるブランコも、
生温い風も、頬に張り付く髪も。

…私はきっとあの日から、
何にも変わらない筈なのに。



どうして世界には、光と影が、笑顔と涙が、
幸と不幸が、愛と嫌悪があるのだろう。
もう、それらが表裏一体なのか延長線上なのか
それとも全く別のものなのかさえ、わからない。

だって、私の日々は、何の前触れも無く消えてしまったのだから。








頬を伝う汗が、まるで涙みたいだった。
否、涙だったのかもしれない。





「…A…!?何…その怪我!」







嗚呼、声が聞こえないよ。
まるで、錆びついたみたいに。
水の中で聞いてるみたいに、
籠った声が遠くで聞こえる。

視界をぐしゃぐしゃにして、
聴覚さえも使いものになんなくて。





それでもそれが彼だとわかったのは、
落ち着くインド香の香りがしたから。

綺麗な紅葉色が、ぼやけた視界の隅で、
揺れたのだ。






「っ…ぁぁ…っぅぅ…っ、」




止まらない嗚咽も、私を抱き締める体温も、
撫でられる頭も、私をあやすような落ち着いた声色も。


ただ、全てが怖かった。









彼のやさしさに触れてしまったこと。


もう、戻れないよ、って。
あの頃の幸せなんて、戻りはしないよ、って。
そう言われてるみたいで。




悔しかったわけじゃない。
悲しかったわけでもない。
ただ、この世界に絶望してしまったの。




まるで、崖からつき落とされた気分だった。

ねえ、真っ逆さまに落ちてもさ、
誰も気付いてはくれないんだから。
私独りが崖の下で震えていようと、
誰も気に留めやしないんだから。





だから。






「やさしく、しないで…っ」





今更、なんだというの。

もう一度落っこちちゃったんだ。
傷は癒えやしないよ。






どうせ落ちるなら、
海で藻屑になりたかったの。




沈んだ夕日と、彼の体温。
その変声期の低めの声が、
妙に耳に残っている。

一番星は、私を嗤ったのだ。





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ティアー(プロフ) - 怜希さん» ありがとうございます!私的にも終わりはハッキリさせたいな…と思っておりますので、これからもどうぞ宜しくお願いします…! (2017年11月29日 21時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
怜希(プロフ) - 初めまして、怜希です。とても切なくて、涙が出てしまいました。主人公の失恋と主人公の昔出会った男の子との展開、恋物語を楽しみにしています。失恋ですけど、ハッピーエンドになる事を祈ります (2017年11月28日 23時) (レス) id: a102b15976 (このIDを非表示/違反報告)
ティアー(プロフ) - ran ranさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2017年9月30日 11時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)
ran ran(プロフ) - 読んでいてとても切なくて、どんどんこの物語に引き込まれていきました。綺麗でとても感動しました。これからも更新を頑張ってください。応援しています! (2017年9月26日 14時) (レス) id: a9500efc22 (このIDを非表示/違反報告)
ティアー(プロフ) - cherrycherryさん» 貴重なご意見ありがとうございます!これからはそのように心がけていこうと存じ上げます。これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2017年9月12日 13時) (レス) id: baa942cd57 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ティアー | 作成日時:2017年8月14日 21時

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