春に拒まれ冬に見蕩れる ページ6
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「んで、どうすんですかィ、土方」
「呼び捨てにしてんじゃねェク総悟。・・・どう、って、あの女のことか?
あの女は無罪放免だ。だが、バクダンなんか持ってちゃァ厄介なのには変わりねェ。ザキに見張らせる。
というかお前、女に興味を示しだしたことなんざなかったのにえらくご執心じゃねェか」
もしかして、これか?
なんて、小指をたてる男に笑ってしまう。
表現古すぎんだろ。
「・・・・・・そんなんじゃねェですよ」
言い聞かせるようにそう言葉を落とし、空を見上げる。
冬の真っ只中だった。
ようやくクリスマスだの正月だのの浮かれた行事が終わり、街にも普段の生活が戻り始めていた。
吐いた息が、澄んだ冬空に解けては消えていく。
あかい頬をマフラーに埋めて、丘の上にそびえる桜の木を見つめた。
今はまだ葉さえ生えないただの木だが、春には・・・あの女が死ぬ頃には、満開に咲き誇っているのだろうか。
「・・・・・・寒ィ」
ポケットの中で握りしめた掌が寒さのせいで悴んでいく。こんなことならカイロ持ってくんだった、なんて後悔しては身震いした。
春の空気さえ差し込まぬ、酷く寒い冬だった。
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カモミール。(プロフ) - 情景描写が…凄い…(語彙力)死ネタなのに話がとても綺麗です… (2019年1月2日 18時) (レス) id: e321ef376e (このIDを非表示/違反報告)
山乙女 桜(プロフ) - 何これ凄い‥‥‥‥! (2019年1月2日 14時) (レス) id: c43285d175 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ティアー | 作成日時:2018年9月26日 2時