咲き乱れるは紅色の ページ14
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ふと瞳を開ける。
俺はまだ、あの日のことを昨日の事のように思い出してしまう。
昨日寝付けなかったせいか、少し眠たくなってくる。
曇天の空を見上げ、目を細めた。
あの日いなくなった彼女の面影を、
俺はまだこの桜に探してしまう。
あれからもう、何回目かの春を迎えていた。
その度に俺の胸は悲鳴を上げる。
「・・・・・・なァ、A」
愛してらァ。
返事も残さずいなくなったAを桜に例えたところで、彼女は彼女でしかない。
曇天の空が見下ろす。
早朝の春風が頬を撫でた。
「・・・・・・私もだよ、総悟」
頬を撫でた風が残した音に、顔を歪める。
「・・・・・・ッ、!?」
今確かに、彼女の声が聞こえたのだ。
周りを見渡して、彼女を探す。
「・・・・・・Aッ、!」
「・・・・・・総悟、」
桜の向こうで彼女が笑っていた。
「・・・・・・A・・・っ、待て、待てよ・・・!」
「置いてってごめんね、
愛してるよ」
じゃあね____。
矢継ぎ早に言葉を残した彼女。
触れようとした手のひらは届かなかった。
ふいに桜吹雪がより強くなる。
一瞬見失った隙に、
彼女はもういなくなっていた。
だけど。
彼女はあのとき、確かに生きていた。
あの日、確かに桜と散った。
今確かに、俺に微笑んだのだ。
微睡むような春の風に、
ほんの少しの哀愁を混ぜて。
「・・・・・・・・・馬鹿だねィ」
挑発してみても、
もう彼女が乗ることはない。
その桜にそっと微笑んで、背を向けた。
咲き乱れるは紅色の
完
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←桜に染まり春を彩る
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カモミール。(プロフ) - 情景描写が…凄い…(語彙力)死ネタなのに話がとても綺麗です… (2019年1月2日 18時) (レス) id: e321ef376e (このIDを非表示/違反報告)
山乙女 桜(プロフ) - 何これ凄い‥‥‥‥! (2019年1月2日 14時) (レス) id: c43285d175 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ティアー | 作成日時:2018年9月26日 2時