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奈穂が芥川の方を振り向く
その表情は、何時もよりか柔らかく、夕日に染まって
何処か、神秘的だった
"……こんなことを、私が云うのも変だと思うけれど"
そして、その声は優しく、そして力強く芥川の耳に届いた
────────誰かが貴方を〖悪〗と云うなら、私は貴方を〖善〗と云います
自分の口から、微かに声が出た
私にとって、貴方は───────
芥川が目を見開く。喉から唸りが漏れ、絶叫に近い声を上げた
全身の布が爆発的に伸長し、右腕に寄せ集められた
振り下ろされる敦の拳と、芥川の拳が
芥川「羅生門──────────龍穿橧！」
激突した
正面から衝突した二つの力が、相手を食い破ろうと空間を暴れ回る
衝撃で屋上の床が剥がれた
敦「ぐぁ……………っ！まさか、か……、更に…………！？」
敦が呻いた。芥川の衣刃は、さらに膨張した
何度も何度も、奈穂に助けられた
僕はまだ、お前を守れていない
今度こそ、守ってみせる。この力で
もう二度と、辛い思いはさせない
芥川「羅生門──────────」
芥川の拳が白く輝いた。相転移された異能が、周辺空間の物理定数に干渉し始めているため
膨大な衝撃波が一点に集束した
芥川「──────────銀絶波涛!!」
芥川が拳を振り抜いた。銀色の衣刃が敦の拳を包み込み押し流し喰らい尽くす
その圧倒的な力に敦は耐えきれず咆哮を挙げた。首輪が衝撃波に飲まれ、砕け散った
屋上が銀色の光に包まれた
大砲が着弾したかのような衝撃波と光芒は、横浜のどこにいても感じ取れる程凄まじいものだった
衝撃が収まり、全てが止まった頃
屋上に、動くものはいなかった
敦は倒れていた。右腕から全身を破壊され、首輪も破壊されたことにより再生能力が極端に下がり、もう立つ力も残っていない
芥川は立ち尽くしていた。限界を超えた出血と、神経が焼き切れるほどの異能の連続使用で立っているのがやっとの状態だ。だが気は失っていない
全身傷だらけの体を引きずりながら、敦の前まで歩いた
敦「殺……………せ」
喘鳴を繰り返しながら敦が云った
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作者名：るーりん | 作成日時：2022年12月29日 0時
