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判っている。そいつはどこまでも追ってくる。叫ぼうにも喉がない。泣こうにも目がない。僕は全身がばらばらになりそうな恐怖に怯えながら、自分から逃げる
でも、自分からは逃げ切れない。この世の誰も
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〜NOside〜
敦はマフィアビル内を疾走していた。ほとんど獣のような前傾姿勢で走り、壁を蹴って廊下を直角に曲がり、階段を跳ねるように駆け上がり、轟々と建物を駆けていった
敦の頭の中にあるのは芥川に追いつき、鏡花を救うこと。それ以外の考えは全て頭の中から消えていた。通路の先に、銃を持った構成員達が移動しているのが見えた。人数は八人ほど、敦の進行路を塞いでいる
敦「退ケ」
唸り声のようなものが聞こえたのも束の間、敦が一団に突っ込んだ。砲弾が間近を通ったような衝撃を受けた構成員達は壁に叩きつけられた。ほとんど何が起こったのかも分からず
反射的に銃を構えた構成員は、敦が隣を通り抜けた直後、持っていた銃と共に指や腕などがばらばらになり、全身から血を吹き出して倒れた
敦はそれにも構わず、前へと駆けていく。ただ前へ。恐怖から逃げる為に
"絶対に、──────ては駄目だ、敦君"
駆ける敦の視界に、芥川の背中が映りこんだ
敦が咆え、速度を上げて芥川に突っ込もうとする。禍々しいその声に芥川が振り向いた。外套をカーテン状に展開し防御壁としようとするが、それより早く敦は床を砕いて跳躍し、芥川の懐へと飛び込んだ
"絶対に、──────ては駄目だ、敦君"
敦が咆哮する
敦「ォオゥルルゥウ"ァァアウ"ッ!!」
芥川「莫迦な──────────」
唖然とする芥川の顔を、敦の拳が叩き砕いた
芥川の首が限界まで伸びる。大型車に跳ねられたような衝撃を受け、芥川が広間を飛んでいく。壁に叩きつけられ、一瞬意識を刈り取られた。壁に叩きつけられた時、まるで糸の切れた人形のように前に倒れ落ちた
倒れ落ちなかった
敦が芥川の肩を掴んで空中で受け止めている。標本のように壁にピン留めされた芥川の胴体に、無数の拳が突き刺さった
機関銃のような拳の雨が、芥川の胴体を砕き、壁に亀裂を走らせた。芥川の身体が振り子のように揺れる。素手で銃を切り裂くその拳は、当たったら一溜りもないだろう。その拳が芥川に降り注いだ
何発撃っても敦は止めない。見開かれためには、極大の恐怖があった
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作者名:るーりん | 作成日時:2022年12月29日 0時