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すると、銀ちゃんは徐に私の手を掴んだ。今にも涙が溢れてしまいそうな、とても辛そうな表情で私を真っ直ぐ見た
銀「……奈穂さん…貴方にいきなりこんなことを云うのも如何かと思いますが……私からひとつお願いがあります」
『どうしたの…?』
そして、銀ちゃんは少し微笑んだ
銀「どうか兄を、よろしくお願いします」
私は兄、という言葉を聞いて一瞬で理解した
銀ちゃんは芥川さんの妹なのだと
『よろしくお願いします…?何故私に?銀ちゃんが側にいてあげれば………』
銀「私は兄の元へは戻れません。私は兄の側に居るべき人間じゃない。だから、こうやって奈穂さんにお願いしているんです」
どうして戻れないのか、と聞こうにもきけなくて、私は黙って俯いた
『……………無理だよ』
その声は、自分でもびっくりするくらい震えていた
『私は……首領から条件を出されて…もしかしたら貴方の兄の命を奪ってしまうかもしれない。貴方の兄を傷つけてしまうかもしれない。私にそんな重要な役割、できっこない……』
銀「……判っています。それは、私が何とかします」
私は顔を上げた。何とかする…?どうやって…?あの首領をどうやって説得するのか……検討もつかない
それよりも、私はずっと疑問に思っていることがあった
『……どうして私にそんなお願いをするの?私は芥川さんの何にでもないのに』
銀ちゃんは少し困ったように笑ってから、ゆっくり口を開いた
銀「奈穂さんは…兄にとって、とても大事な方だと思っています。だって、兄がこんなに他人の為に命を張れるだなんて、早々無いですから。それに、今もこうやって暴れているのは、私と奈穂さんを助ける為だと、私は思います」
私は…芥川さんの大事な人?そんな……わけ……でも……いや……
銀「だから、お願いです奈穂さん」
そして、銀ちゃんは深深と私に頭を下げた
銀「兄のところへ居てやってください。どうか、兄を救ってください」
『銀ちゃん……』
銀ちゃんはこんなにもお願いしてきてくれている。本当に大丈夫なのだろうか、私なんかに任せて。もし、彼を傷つければ……
いや、やめよう。この考え方は
『……正直、これからどうなるか判らない。条件を何ひとつ飲み込まなかったら、下手すれば私は処刑されるかもしれない。本当にいいの?』
銀「はい、貴方にしか頼めないから」
※文字数…!!
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作者名:るーりん | 作成日時:2022年12月29日 0時