夜柱は悲しく輝く2

冷静に ページ30

貴方Side
湧き出る鬼を相手にしながら、落ち着いて考える。

奴の鬼血術は何だろう。

対象の精神を操る系統のものか…少なくとも、物理的なものではない。

貴「そもそもここにいる私は現実？夢？いや、それは現実。生身のままここにいるはず…」

というより、何だかこの屋敷に見覚えがあるのだ。

縦にずらりと並んだ部屋。1番奥には開けた縁側があって…

貴「思い出した。ここ、若葉さんのときの屋敷だ」

ということは私の記憶が作り出した空間？

見た限り最後だと思われる鬼を斬って、辺りを見回す。

貴「確かこの押し入れには布団が入っていたはず…」

部屋を隅々まで探索して記憶したのだから間違いはないのだが、そこには布団どころか何も入っていない。

貴「ならこれは、私の記憶で作られたものじゃない…。もしかして…」

まだ仮定に過ぎないけれど、あの鬼の鬼血術は見たものを具現化し、作り出した世界に現実世界の肉体を引き込む能力で…
だから、見ていない家具の中にあるものや細かいものはここにはない。

どうりで玄関からもどこからも外に出られない訳で。

貴「ということは、さっきの世界もすでに想像の世界…」

棚の中が空で、誰もいなかったことにも納得がいく。

貴「さっきの世界で眠ってここに来たってことは…」

あいつの想像の世界はいくつもある。それを行き来する条件はきっと、

貴「眠ること…！」

鬼の意識の中にいるのはみんな同じだけど、いる世界が違うから気配が薄いままなのね。

貴「うん、もう一眠り」

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