第9話 優しさ ページ10
私が、悪魔ではなかったことを後悔していると、村長が話し始める。
「我々はこの姿に引け目を感じ、他の島と交流をしてこなかった。」
「その為に、ガルナ島は呪われているという噂が広まってしまったんだ。」
「港の人たちが島を怖がっていたのはそのせいだったのね。」
私はその島から出てきた子どもとして、港の人からかなり酷い扱いも受けたけど、それよりも辛かったのは、島から追い出されたこと。
「Aは、見ての通り普通の人間だ。こんな悪魔の島に居るよりも、島を出て、人間らしい生活を送った方がAの幸せだと思っての。」
分かってる。村長はとっても優しくって私の中では、おじいちゃんみたいな存在だった。
でも、本当に信じていいのかな。
島を出るときのみんなの冷たい表情を思い出す。
「俺が、Aが自分の姿が悪魔じゃないことを気にしていたのに気づいて、人間の姿で一緒に遊ぶようになってから、Aは余計に自分のことを責め始めたんだ。俺らに気を使わせてしまっているとな。」
「だから、村人全員で決めたんだ。
Aがこの島から出たら、いつか、この島のことを考えずに笑える日がくるんじゃないかとな。」
「私、悪魔じゃないからみんなに嫌われて…、それで、追い出されたと思ってた。」
私がそう言うと、みんなが笑顔で答える。
「「そんなわけないだろ！！」」
みんな優しすぎる。私がこれまで助けてもらってきた人はみんな優しすぎる。
自然と私の顔は濡れていた。
それを見て、ボボたちは慌てていたけれど、
「ありがとう。本当にありがとう。私は世界でいちばんの幸せ者だね。」
満面の笑みでそう言った。
その後の宴で、霊帝＿＿リオンの味方をしていた人たちが来てひと悶着あったけど、幸せな時間を過ごすことができた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日が明け、村の入り口で別れを惜しむ。
「な、なんと、報酬は受け取れない、と？」
「ああ。気持ちだけで結構だ。」
「本当は、彼らが勝手に来ちゃっただけで、正式な仕事ではないから。」
「しかし、ギルドから連絡があって、正式に受理したと。」
「それは、私が後から引き受けたの。
元々みんなから報酬をもらうつもりはなかったし、気にしないでよ。」
エルザと私は、意地でも報酬を受け取らないと話し合って決めた。
いや、話し合うってほどのことでもなく、一言二言で済んだが。
しかし、私たちの気持ちに反して、どうしても報酬を渡したい村長たち。
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作者名：あざらし x他1人 | 作成日時：2018年9月20日 23時
