第36話 ジークレイン ページ37
カエルに案内されてついた先は、聖十大魔導の1人であり、評議院の1人でもあるジークレインの部屋の前だった。
カエルは、部屋の前に私を送ると、戻ってしまったため、私1人。
仕方なく部屋に中に入る。しかし、その部屋の中に部屋の主人はいない。
どうすることもできなくて、とりあえず部屋の中にある本の背表紙を見ながら時間を潰す。
呼び出しておいて居ないとか…。
そう言えば、マスターの裁判中か。
評議員のメンバーなら居なくても仕方ない。
けれど、謎である。なんでかの有名なジークレインが私を呼び出したのか。
接点なんてなくて、私なんかは名前しか知らない。
どれだけ時間が経ったのか。
そんなことを考えていると、扉が開く音が聞こえた。
振り向こうとした瞬間に、入ってきた人物に抱きしめられる。
私よりも格段に身長が高いこと、男であることはわかった。
「あ、あの、どなたですか？」
「…会いたかった。」
「は、はぁ。」
なんだこの男。変人にしか思えない。
そんなことを考えていると、やっと腕を緩めてくれた。
やっと顔を確認できた。
「え？…どう言う事？」
彼の目元、鼻筋。
顔のパーツが随分私に似ている。
「俺はジークレイン。君の兄だ。」
「…いや、うん？
じゃあ、貴方もラメトリアの子ども？」
「…考えてみろ。人間がドラゴンから生まれるわけない。
そのラメトリアというドラゴンが、お前が生まれてきた日に村を襲い、さらっていったんだ。」
「…ラメトリアはそんなことしない。」
急に呼び出してきた男が何を言っても、信憑性が薄い。
そして、何が目的なのかもわからない。
しかも、父さんの、ラメトリアの悪口とか許せない。
「…聞いてくれ。今から16年ほど前、俺らの村がドラゴンに襲われた。
父さんや母さん、村のみんなは殺されてしまい、生まれたばかりのお前はそのドラゴンに連れていかれた。俺は運良く生き残った。だから俺はずっとお前を探して居たんだ。
今回の妖精の尻尾と幽鬼の支配者の戦争で、お前のことをやっと見つけた。」
「信じられない。離して。」
そうやって無理やり離れようとすると、頭を撫でられる。
逃げようとする意思がなくなっていく。
「なんで…懐かしいと思っちゃうの……。」
「それこそ、俺らが兄弟である事の証明だ。」
疑えない。この手の感覚は知ってる。
「…そっか、兄さんなんだ。」
混乱はしているけれど、これだけは確かである事がわかった。
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作者名：あざらし x他1人 | 作成日時：2018年9月20日 23時
