脅威少年と気まぐれ狼さん (ページ2)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:58,523 hit

2話ページ2

「お、狼さん…」

村の人からはいつも石を投げられる。
知らない悪口を言われる。
服も寝る所も、全部が冷たくてボロボロ。
でも、狼さんはあったかい。それに優しい。
気まぐれだって言ってるけど。

「入って来たらいいのに。」

「え、あ…ごめんなさい…」

「謝れとは言ってないんだがな。まあ良いや。」

狼さんは綺麗だ。
真っ黒で、光ってるような目がとても綺麗。
狼さんといると楽しくて、ずっと一緒にいたいと思う。けど、村に帰らないと怪しまれるから。

「狼さん…」

「んん？」

「狼さんは、おれが助けて言ったら助けてくれる？」

「さーてね。」

ザバっと暖かい水が頭から流れてくる。
ビショビショの身体をふわふわなタオルで拭いてくれた。そして狼さんは言った。

「私のその日の気分による。」

「じゃあ…助けてくれないの…？」

「言っただろう？気分だって。これだって気まぐれ。」

気まぐれなのに何でこんなに暖かくしてくれるんだろうか。だって、普通は雑に使う筈なのに。

「なんでなん…？」

「私は人間じゃないから。人間みたいに優しくはないからさ。」

狼さんはそう言った。
確かに狼さんは大きな耳と尻尾が生えてる。ふわふわとしてて触りたくなる尻尾と耳が。獣の目とか。

「おれ、村では脅威って言われてる。」

「脅威？二つ名かな？」

「違う…えっと、多分悪口。村が滅ぶ脅威の存在やって言われてる。」

「坊や、動く嵐とか何かなの？」

「…？」

「理解出来ないなら、普通の人間っぽいのね。」

そう言いながら狼さんはおれが着てた服を直していた。ぶかぶかな服を着て、ふかふかなソファーに座らされて今は甘い飲みものを飲んでる。
ずっとこんな生活が続けばいいのに。
でも、これは狼さんの気まぐれって言っていた。

「坊や、坊や。」

「え、な、なに？」

「ぼーっとしてたけどどうしたの？」

「ううん！何でもない。」

「そう。じゃあこれ縫い終わったから着替えてらっしゃい。」

これは狼さんの気まぐれ。
じゃあいつかは飽きちゃうと言う事なのかな。

「嫌や…」

おれが大人になるまでずっと続いて欲しいな。

「どう？」

「うん、平気…ありがとう。」

「ん～？どういたしまして。」

おれが外に出ようとした時、狼さんが呼んだ。

「坊や、これ」

「なに？」

「これを肌身離さず持てなさい。」

狼さんが渡したのは綺麗な糸で出来たお守りだった。そう言われておれは今日も村に帰った。