太宰治至上主義 [文スト] [男主]

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取り敢えずマフィア時代に太宰さんに教えて貰ったやり方で女性の気の済む迄泣かせる事にする。ぽんぽんと頭を撫でてやると一層強くしがみついて来た。


之は時間が掛かりそうだな、と意味も無く彼女の黒髪を眺めていると、


ピリ、と肌に感じたのは強い殺気。


見ると其れは床に縫い付けられた男からだった。先刻まで暴れていた男が不気味な程静かになっている。まるで、嵐の前の静けさのような。


男に馬乗りになっている女性も其れに気付き男に声を掛けるが応答無し。おれは女性に一声掛けて体を離し何時でも動けるように立ち上がる。男が微かに動いた。上着のポケットに手を突っ込み何かを握ったのがポケットの上から判った。あの形は小型のナイフか。


馬乗りになっている女性は気付いていない。男がうつ伏せのままにやりと笑った瞬間、




「ぐあｯ…！？」




おれは彼女を持ち上げて姫抱きし、ポケットに突っ込まれた方の腕を足で踏み付けた。カランと音を立てナイフが床に落ちると彼女は漸く刃物に気付いたようだ。ぐりぐりと足で踏み付けるともう抵抗する気がなくなったのだろう、男はくそ…と声をもらしながら涙を流した。


何か理由があってこの犯行に及んだのだろうが、理由が何であれど罪は罪だ。一般常識の欠けるおれに、表の世界で生きる為太宰さんが教えてくれた。


丁寧に地面に下ろして突然抱き上げた事を謝っていると誰かが通報したのだろう警察がやって来た。職務質問は困るので立ち去ろうとすると女性がおれの背に声を掛ける。




「あんた、名前は？」


「…A、です」


「Aね、ありがとう。お陰で助かったよ。妾は与謝野晶子。之でも武装探偵社の一員だから何かあったら安くするよ」





名前を名乗るべきでないかと思ったが名乗らない方が不自然だとも思い少しの葛藤の結果下の名前のみを女性に告げる。


名刺を渡され受け取ると確かに武装探偵社と書かれていた。まあ何も無いのが1番だけどね、と肩を叩かれ会釈してその場を去る。どうやら警察と会いたくないというのが何となくでも伝わったようだ、流石探偵社。


このデパートに来たのは食料の買い出しだったが今日はもう無理だろう。そんなに急いでいる訳ではないのでまた明明後日にでも訪れよう。

訪問者→←武装探偵社

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