乾杯 ページ28
*
「其れでは僭越乍ら私、太宰治が乾杯の音頭を取らせて頂きます」
何だ畏まって。国木田は席を立ち並々と注がれたジョッキを持っていない方の手をマイクの様に扱う相棒の姿に訝しげな視線をやる。そんな太宰に尊敬の目を向けるのは此の宴会の場の主役であるAだ。Aは未成年の為、手元にあるのはジョッキではなくグラスで中身は酒ではなく清涼飲料水(ジュース)である。
ジョッキを片手に堂々と振る舞う太宰、そんな太宰に目を奪われているA、二人に呆れる国木田に早く酒が飲みたいと急かす与謝野。場は乾杯をしていないにも関わらず混沌(カオス)だった。
「えー、我ら武装探偵社の新入りであるAが無事に入社試験を合格し、目出度く正社員に為った事に…、乾杯!」
「乾杯っ!」
ガチャン、とジョッキとジョッキがぶつかり合う音が居酒屋の一室で響いた。Aはどうすれば宜いのか判らず周りを伺っていたが、国木田とジョッキをぶつけ合った太宰がAの持つグラスに静かにジョッキをぶつける。
Aはぽかんと太宰を見上げる。太宰は一度Aと視線を合わせ片目を瞑りウィンクを送った。
…格好好すぎる
心から敬愛する太宰の優しさと整った顔からのウィンクを一身に受けたAはゴンと机に額を打ち付け「狡い…狡い…」と呪文の様に呟く。うふふ、何時も私が思っている事だよ。太宰はAに日頃の仕返しが出来た事を喜び、グイッとジョッキの中身を煽った。
「おや、A。どうしたンだい?額なんて打ち付けて」
「太宰さんが格好好すぎるのが悪い…です」
「Aは太宰が好きだねェ」
「!?ごふっ」
「おい太宰!汚いぞ!」
Aは与謝野の言葉に内心首を傾げる。好き?否、おれの太宰さんに対する気持ちは好きと云う言葉だけで表せない。あの日、貧民街で薄れ行く意識の中、死が近づくのを只待っていただけのおれに優しく手を差し出して呉れた太宰さんはその瞬間からおれの凡てと為った。太宰さんが云う事為す事凡て正しい。誰もが左を向いていようが、太宰さんが右だと云えば右なのだ。其れでも左を向く奴はおれが粛清してやろう。
然し其の様な事を与謝野に云う訳にも行かず、Aはこう応えた。
「太宰さんはおれの敬愛する人ですから!」
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緑猫(プロフ) - ねこまろ。さん» 修学旅行お疲れ様です!更新された瞬間だなんて嬉しいです!応援もありがとうございます!更新頑張ります! (2018年5月23日 16時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
ねこまろ。(プロフ) - 修学旅行でこの作品から3日も離れていました。悲しいです。いつも更新された瞬間に見に行ってるのに……。あと、猫音からねこまろ。に名前を変えました!名前変えてからも応援し続けますよ!うっとうしいぐらいに、ずっと応援します!更新ファイトです! (2018年5月23日 15時) (レス) id: 4738577f15 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - 猫音@底辺さん» そこまで楽しんで頂けていると思うととても嬉しいです!ありがとうございます!!頑張ります! (2018年5月6日 22時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
猫音@底辺(プロフ) - 最近の楽しみがこの小説を読むことです(笑)僕、いつも楽しみにしてるんで、これからも頑張ってください! (2018年5月6日 15時) (レス) id: 4738577f15 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - 蒼さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年5月3日 16時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...
作成日時:2018年4月7日 15時