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「その子、どうやら嘘"は"付いていない様だよ」
まぁそれも大きな嘘は、なんだけど。
福沢が乱歩、と呼ぶとノックも無しに突然扉が開きハンチング帽を被った細目の青年が入室した。何処か含みを持たせた乱歩の言葉に福沢は何か隠しているな、と少年を見る。
例の少年は突然入室して来た乱歩に驚いている様で目をぱちぱちとさせていた。勿論、之が本当に驚いているとは限らない。
懐から愛用の眼鏡を取り出し掛けた乱歩は目を開き、少年、Aと見つめ合う。愛想の良い笑みを浮かべるAだったが暫くするとはぁ、と息を吐き整った顔から笑みを消した。
何か仕掛けて来るのか。
福沢と乱歩は少し身構えたがAは細い両腕を顔の横に上げて争う意思が無い事を二人に示した。
「流石、武装探偵社を支える頭脳… ワタクシの負けです」
「!知っているのか」
「名探偵殿は有名ですから」
「其れは嬉しい事を云って呉れるじゃないか」
満更でも無さそうな乱歩は気を佳くしたのかAに手に持っていた麩菓子を手渡した。お礼を云い受け取るAだが麩菓子を不思議そうに見つめている。
乱歩が空いている席に着いた所で再び話が進む。
「其れで、君は何者だ?」
「ポートマフィアに所属していた者です」
「いた…抜けたと云う事か?」
「はい」
福沢は乱歩の方を向いた。乱歩は福沢の視線の意味を理解し、本当だとAの言葉の真偽を告げる。成程、ポートマフィアを抜け、誰かの為に此処に来たと。
福沢は先程の自分の推理と現状を合わせてAの立場を推測していく。
「此処に来た理由は、与謝野さん?」
「嗚呼、其れは違います」
「何?」
「与謝野晶子さんと出会ったのは運が佳かった。名刺が手に入ったから其れを入社希望に出来ましたし」
「本当の目的は?」
「目的なんて大層な物では在りませんが」
「うん」
チクタク チクタク
時計の秒針が時間を刻む音のみが響く。一体どんな言葉が飛び出してくるのだろうか、もう福沢と乱歩は少年に警戒心など抱いていなかった。在るのは只、ポートマフィアを抜けて迄此の探偵社に入りたいと思ったその理由が知りたいと云う興味だけである。
少年は笑みを浮かべた。探偵社に来てから見せていた作り物の笑みではない。心からの笑顔だった。
「太宰さんが此処にいるからです」
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緑猫(プロフ) - ねこまろ。さん» 修学旅行お疲れ様です!更新された瞬間だなんて嬉しいです!応援もありがとうございます!更新頑張ります! (2018年5月23日 16時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
ねこまろ。(プロフ) - 修学旅行でこの作品から3日も離れていました。悲しいです。いつも更新された瞬間に見に行ってるのに……。あと、猫音からねこまろ。に名前を変えました!名前変えてからも応援し続けますよ!うっとうしいぐらいに、ずっと応援します!更新ファイトです! (2018年5月23日 15時) (レス) id: 4738577f15 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - 猫音@底辺さん» そこまで楽しんで頂けていると思うととても嬉しいです!ありがとうございます!!頑張ります! (2018年5月6日 22時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
猫音@底辺(プロフ) - 最近の楽しみがこの小説を読むことです(笑)僕、いつも楽しみにしてるんで、これからも頑張ってください! (2018年5月6日 15時) (レス) id: 4738577f15 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - 蒼さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年5月3日 16時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...
作成日時:2018年4月7日 15時