絡みつく呪い ページ26
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コンビニの駐車場に止まった車から降りて店内に入ると
陽気なBGMとやる気のないバイトに迎えられる。
俺たちはそれぞれ目当てのものを買って車に乗り込んだ。
パキッと新品のペットボトルが空く音が隣から聞こえて
俺も続けてガサガサとビニール袋を漁る。
そうしてしばらく車に揺られて着いたのは、
特級が住み着くであろう旅館。
そのあまりにも禍々しい雰囲気に肌がピリピリとして飲み込まれそうだった。
「……離れんなよ」
ボソッと頭上から聞こえてきた声は悟の声で、
本日初の俺への言葉だった。
予想もしてなかった突然の事に驚いて『っ、ぅん…』と微妙な返事をしてしまう。
そんな俺たちを後ろから見守る田辺さんは、
いつもよりも眉毛を下げて帳を下ろした。
空に闇が溶け込んでいき、俺達を隠す。
毎度の事ながら、これだけはどうも慣れない。
呪術師になってから、
俺はたくさんの人の死に触れてきた。
俺の知ってる人も知らない人も、呆気なく死んだ。
その度に思う。
__________いつかは俺も死ぬんだ。
この闇の中、独りで死ぬ。
みんなそうして死んだのだから、
俺だけが逃げる訳には行かない。
『……っ、』
「…A?……どうした?」
『……死、にたく、…ないっ…』
情けない。
1級呪術師が聞いて呆れる。
それでも思ってしまう。
怖い。死にたくない。逃げたい。
一度震え出した手は神経を伝って全身に廻る。
肩も奥歯もカタカタと震え上がり、
息がうまく吐けない。
その時、悟はゆっくりと俺を抱き締める。
こんなに密着したのはいつぶりだろうか。
過呼吸を起こしそうだった息遣いも驚きのあまり
止まりかける。
「…雰囲気に飲まれんな。俺が居る。」
そう言われてハッとする。
特級が故に低級の呪霊はいなくて、
それがやけに緊張させた。
想像すれば死んだ俺が思い浮かぶ。
だからだ。
そのために、悟はここにいる。
『…悪ぃ、パニクった。』
「大丈夫。予想してた。」
『はは、んだよそれ』
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nns - めっっっちゃ好きです!!!!!更新お待ちしてます!!!!! (11月3日 22時) (レス) @page30 id: 65c15343ec (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - またの更新楽しみにお待ちしております。 (8月19日 10時) (レス) @page30 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - お元気ですか? (7月25日 2時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
しま(プロフ) - コメント失礼します!相澤先生の小説からここまで一気読みしてしまいました!夢主くんに対して容赦なさすぎて私の性癖に刺さりまくりで最高でした…!更新、待っていますね!ヽ(゚▽゚︎*)乂(*゚▽゚︎)ノ (5月15日 23時) (レス) @page30 id: 901e45cbed (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - ぁ、田辺さん好き。八の字に下がる眉頭が俺の住処です。てかこの作品とっても面白いです!!! (2022年11月21日 12時) (レス) @page27 id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おっ腐 | 作成日時:2022年9月1日 22時