好き 22 ページ28
「・・・Aの事だ」
そう言われ、少し表情が硬くなったのが、自分でも分かった。
「はい・・・」
上ずりそうな声を必死に抑えて、そう答えた。
「あいつは、バカだ」
真剣な顔で、縁側から庭を見つめ、そう呟いた、Aのお父さん。
・・・。
バカ、かぁ。
「え?」
「あいつは、バカだ」
「え、あ、はい・・・?」
ダメだ。話が通じてない気がする。
俺の何かが折れそう。
「好きだったヤツに裏切られるくらい、バカで純粋だ」
「!・・・はい」
顔色が変わらない。
なんなら、表情がピクリとも動かない姿を見て、ゴクリと喉を鳴らした。
「好きだった人っていうのは、Aが尊敬してた、慕っていた、近所のお兄さんの事なのよ」
そう言って、さっきまで洗い物をしていたはずのAのお母さん。
「恋愛感情で好きになったのは、りぶくんが初めてなのよ、あの子」
初恋がこの歳ってやばいわよねぇ・・・と付けたしながら、縁側まで出てきた。
「・・・母さん」
「あら、ごめんなさい」
「私、りぶくんが勘違いしてると思ってね。思わず出てきちゃった☆」
・・・どこまで、おちゃめなんだろうこの人は。
そんな事を思っていると、また、Aのお母さんは家の中に戻って行った。
「それで、話を戻すが・・・」
そこで、また枝豆をつまむ。
「・・・Aには、君しか居ないんだろうな」
その言葉が、心にズシリと来る。
スッと、立ち上がったAのお父さんを見て、思わず、自分も立ち上がる。
二、三歩、前に出たAのお父さん。
その姿は、月明かりに照らされていた。
「すまんな、りぶくん」
「君しか、居ないようだ」
振り返った、Aのお父さんは、いつもの真顔とは違い、小さく微笑んでいて。
「娘を・・・Aをよろしく頼んだぞ」
綺麗な角度で、頭を下げられた。
「・・・っ」
思わず、びっくりして言葉が出なくなった。
「必ず、Aさんを幸せにします。だから・・・」
お義父さんよりも、もっと深く、深く、頭を下げる。
「娘さんを、僕にください」
頭上から、ふっ、と、笑った声が聞こえた。
頭を上げる。
「最初から、そのつもりだ」
「・・・!」
「はいっ」
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オクミヤ(プロフ) - 月の人さん» も、もういっかいやってみる…(白目) (2017年1月31日 21時) (レス) id: 043b93dad3 (このIDを非表示/違反報告)
月の人(プロフ) - オクミヤさん» いや、来てないな(真顔) (2017年1月31日 21時) (レス) id: db3d4350bf (このIDを非表示/違反報告)
オクミヤ(プロフ) - 月の人さん» お、送った…(・ω・`)ど、どうかな…?///← (2017年1月31日 21時) (レス) id: 043b93dad3 (このIDを非表示/違反報告)
月の人(プロフ) - オクミヤさん» うん、待ってるわ!私、待ってる・・・!← (2017年1月31日 21時) (レス) id: db3d4350bf (このIDを非表示/違反報告)
オクミヤ(プロフ) - 月の人さん» なんと!wそれはとてつもなく解らんぜベイベーやな…(・ω・`)もっかい送ってみるね! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 043b93dad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月の人 | 作成日時:2016年2月11日 22時