第３２話 ページ34
第３２話
去っていく焦凍の後ろ姿を見ながら溜息を吐き、私は道場へ向かった。お父さんも帰ってくるなら連絡してくれればいいのに、いつも急なんだよなぁ。
道場へ行くと父がいて「お父さん、おかえりなさい」と言うと父が振り向いた。
「Aか、久しぶりだな」
「もしかして休みなの？」
「いや、少し抜けてきただけだ。それで焦凍は…」
また、焦凍か。
分かってはいたけど。
「焦凍なら自分の部屋だよ」
「なら呼んできてくれ」
「え……」
「中学もあと数日で卒業だ。雄英に行く前に、今の焦凍の実力を見ておきたいからな」
だから呼んできてくれ、という父に私は躊躇いながら頷いた。凄く嫌なんだけど、それ。でもお父さんの頼みは断れない。
はぁ…と溜息を吐きながら重い足取りで焦凍の部屋に向かう。焦凍の部屋の前に立ち「あの、焦凍…」と声をかけるが返事は返ってこない。
居ないのかな、と思いそっと開けてみる。
「………いや、居るなら返事してよ」
「またクソ親父の事だろ」
だから返事しなかったのか。お父さんの事になると少し子供っぽいというか、なんと言うか。
焦凍は畳に座っていて携帯を手に持っていた。
「…お父さんが呼んでるよ」
「行かねぇ」
「…………そう言うと思った。じゃあ、お父さんにそう伝えてくる」
「お前も行かなくていい、あんな奴の所なんて」
そうは言っても、私が言いに行かないとお父さん道場でずっと待ってるよ。折角時間作って焦凍に会いに来たのに、なんかそれは可哀想に思えてきた。
「一瞬だけでも会ってあげれば？」
「………お前」
焦凍が私を冷たい目で睨む。お父さんが嫌いだからって私に当たらないで欲しい。私はただの伝言役なんだから。
焦凍が小さく溜息を吐き「ちょっとこっちに来い」と言われる。凄く嫌な予感がしながら、私は扉を閉めて焦凍の前に座った。
「もうハッキリさせときてぇんだけど、お前は俺とクソ親父……どっちの味方なんだ」
「どっちって…どっちでもないよ」
「ハッキリしろよ」
「何で家族なのに味方とか敵とか作らなきゃいけないの。これは焦凍とお父さんの問題でしょ」
「そうやって話逸らすのか」
「っ…逸らしてないじゃん、私の言ってる事の方が正しいと思う。そういうこと、まさか冬美姉さんにも聞くつもり？」
「………いや」
「じゃあなんで私にだけ…！」
そう言うと、焦凍が少し驚いたように目を見開いた。
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
