第３０話 ページ32
第３０話
「え…あれ、焦凍？」
名前を呼ばれ扉の方を見ると、鞄を持った焦凍が少し驚いたように立っていた。なんで焦凍が2年の教室の前に…3年の教室から玄関までで2年の教室の前は通らないはずだけど。
驚く私に焦凍が教室に入って近づいてくる。
「なんで焦凍が2年の教室に…？」
「俺は雄英の事で校長室に呼ばれてたから、いま終わったとこだけど。お前こそなんでこんな時間まで学校にいるんだ、いつも俺より先に家にいるのに」
「私は日直で色々やることあって……今から日誌書くとこ」
焦凍が校長先生に呼ばれて、か。やっぱり焦凍は期待されてるんだな。そりゃNo.2の父親より凄い個性を持った優等生、あの雄英高校に推薦で受かる生徒だ…校長先生が特別視するのも頷ける。
私も父親の個性を受け継ぎ学校側からそれなにり期待されてはいるけど、焦凍の方がずっと凄い。焦凍は頭の良さも運動神経も、私だけじゃなく他の生徒とは一線を画す天才だ。
同じ期待でも、全然違う。
「……日誌か、大変だな」
そう言って焦凍は私の前の席に座り、私の方に体を向けた。え、なんで？
「……焦凍、帰らないの？」
「お前がそれ終わるまで、待ってる」
え、え、なんで？
ポカンとする私に「早くしないと日が暮れるぞ」と焦凍に言われた。困惑しながらも頷き日誌を広げペンを持つ。
訳も分からぬままとりあえず日誌を書き始めた。もしかして焦凍は、私と一緒に帰るつもりなのかな。でも何でなんだろう……私のこと嫌いなんだよね？
静かな教室に、私のペンを走らせる音だけが聞こえる。私の書く字をジッと見つめる焦凍の考えてる事がよく分からない。
「……なんで、待っててくれるの？」
「……………」
「先に帰ればいいのに…」
「………さあ、何でだろうな」
うっ…聞いてるのは私なのに。この間の寝てる時といい、焦凍ってよく分からない時がある。これに何か意味でもあるんだろうか。
それとも、ただの気まぐれか。
「………俺が」
「え…？」
「俺が居るのは、気まずいか？」
冷たくない声。
少し意外な言葉に私はペンを止めて顔を上げる。オレンジ色の夕日が反射する焦凍の目は父親への憎しみで冷たくなってしまったけど、この時の焦凍の目はなんて言うか……真っ直ぐで濁りがない。
その瞳に、雰囲気に、私は息が詰まりかける。
「気まずい……けど、別に嫌だとかは思わない」
「……そうか」
これは兄の目、なんだろうか？
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冬桜 - 読んでて自分まで胸がｷﾞｭｯてなったりしてすごく面白かった？です！！ (2021年8月6日 23時) (
レス) id: 4ef8003614 (このIDを非表示/違反報告)
黒目。(プロフ) - 小説も絵もめっちゃ好きです！！ (2020年4月17日 1時) (レス) id: 5a29d39680 (このIDを非表示/違反報告)
ひまり(プロフ) - ごめんなさい！随分前の作品みたいですけどスッゴく大好きになりました！このまま読み進めようと思います！挿し絵も大好きです！ (2019年8月15日 18時) (レス) id: a4cdcf90f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠斗 - とどろっちゃん！！！！好きだぁ！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: 223f7ad38f (このIDを非表示/違反報告)
いう - 頑張ってください。 (2018年11月11日 22時) (レス) id: 170f7a55c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年5月14日 17時
