第１０４話 ページ24
第１０４話
Aちゃんが喫茶店から出ていくのを確認し、少し離れた席に座っていた僕は残りのアイスコーヒーを啜る彼女の元へ行った。
「久しぶり、雨宮さん」
「名前で読んでって言ったでしょ、出久くん」
女の人を名前で呼ぶなんて僕にはハードルが高過ぎる。苦笑いをする僕に彼女はゆっくり近づき黒く艶やかな髪を掻き分けた。
その拍子に見えた、首にある火傷の痕。
「……まだ痛む？」
「あら、心配してくれるのね」
二年前くらいだろうか。
彼女の家が火事になり、たまたま近くを通りかかっていた僕は非番でヒーロースーツも着用していなかった。
それでも目の前で苦しんでいる誰かが居るんだと分かったら動く足を止める事も出来ず、僕は消防車が来るより早く一人で火の海に飛び込んだのだ。
その時助けたのが彼女。
「それで、Aちゃんは？」
「ちゃんと誤解は解いたわ。とても面白い子だった、私は好きよ」
「そっか…わざわざ頼んでごめんね」
「元々誤解がうまれたのは私の責任だし、それに貴方にお願いされたら断れないわ」
雨宮さんと轟くんの誤報が流れた時、真っ先にAちゃんの事が心配になった。
お節介だとは分かっていたけど、僕に出来ることならしてあげたかったんだ。雨宮さんは僕も知っていたから、僕から誤解を解いてくれないかと彼女にお願いした。
「それに確か、雨宮さん好きな人いるんだよね。だから誤解は解いた方がお互いのためだし…」
「好きな人…ね。ええ、居るわよ。普段は頼りなさそうなのに、とってもお人好しで正義感に満ちている。まあ自己犠牲も強くあるから心配なんだけれど」
「へぇ、いい人そうだね！」
「……そうね、とっても強い人よ」
僕の目を真っ直ぐに見てそう言った彼女の目は、優しいのにどこか悲しげだった。
「貴方の方こそ、そろそろ彼女でも作らないの？」
「え、僕が？無理だよ、僕なんて」
「そうかしら……貴方の事を愛している人間は必ず居るはずよ、私が保証するわ。ああでも、貴方はそういう事に疎いから気づかないでしょうけど」
そんなに疎いかな…。
そういえば轟くん、Aちゃんから貰ったスノードームの仕掛けに気づいたんだろうか。あの時のAちゃんの言葉で、僕はAちゃんの気持ちに気がついた。
幸せになって欲しい、と思う2人だから。
だから僕も全力で応援してあげたいって思うんだ。
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m(プロフ) - 本当に素晴らしく感動して涙が出ました。素敵な作品、素敵なイラストありがとうございました。 (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 2635dac9cc (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます。ここ三年間くらい感動することは久しく無かったのですが、久しぶりに感動しました。ありがとうございます。 (2021年6月22日 21時) (レス) id: 375d648123 (このIDを非表示/違反報告)
名無し8446号(プロフ) - ガチで泣きました。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 300e87c18e (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)作品がいいオチな分、考察が止まらず恐ろしいことを考えてしまいました(笑)長々と失礼しました。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
おーしゃんびゅー(プロフ) - (続き)夢主の個性によって轟くんの欲が増幅→夢主と逃げる→夢主が死ぬと考えると、個性によってサイコパスにならなければそのまま病院にいて、夢主は死ななかったのでは？と考えました。そうなると夢主の個性＝不幸にするということになり、振り出しに戻ります。 (2020年11月22日 20時) (レス) id: 8df8463d93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月17日 10時
