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にじゅうよん ページ25

Aのトラウマ克服に向けた居残り練習を初めてから数週間。
最初は全身が震えていたAも、今や指先の震え程度で治まっていた。

及川と岩泉のスパイク練習を見ても、コートに立ってレシーブ練習をしても、ごく稀に手元が狂う程度で何ら支障はないように思えるほどまで回復して見せたのだ。
Aは信じられない思いで自分の手を見つめる。
完全に諦めるつもりにまでなっていたというのに、たった数週間で回復して見せた自身の体に驚きが隠せない。
ただ、これが自分一人だけの力で成し得たものではないことだけはわかっている。
もちろんAの気持ちがバレーに向いたことは大きな要因ではあるが、Aがその気持ちになるように粘り、支え続けた2人の力があってこそのもの。
Aは噛み締めるようにぎゅっと手を握ると、壁際で休んでいた2人に視線を向けた。



「あのさ」



真剣な面持ちで2人を見つめながら、Aはゆっくりと口を開く。
言葉にするだけでも緊張してしまう。
まだ挑戦していない新たな一歩。
自分がやりたいと言わなければ、意志を見せなければ、先へはすすめない。



「トス、上げてみたい」



まだ飛ぶのは怖い。
でも、飛んでいる姿を間近で見ることはできるようになった。
それなら、その横でトスを上げたらどうなるのか。
もしかしたら振り出しに戻ってしまうかもしれない。
でも…と、2人を見つめれば、2人は目を輝かせながらAを見つめていた。



「やってみよう!!」



ぎゅっとAの手を握りながらそう及川が言うと、岩泉は嬉しそうに笑ってコートに駆けていく。

一見ただのスパイク練習に過ぎないが、これが大きな一歩なのは間違いない。
期待と不安が入り交じる緊張の中、Aはいつかの自分のように岩泉に向けてトスをあげた。
何度も見てきた岩泉のスパイク。
高さも位置も、ドンピシャ。



「ど、どう?」
「〜〜最っっ高だった!!!お前やっぱすげぇべ!!!」
「完璧だよ!!体は!?大丈夫??!」
「…そういえば、なんとも……」



自分の手のひらを見ながら驚いているAに、及川と岩泉は喜びを噛み締めながらAと肩を組んだ。
大事な一歩。
強く踏み出した一歩。


残すは、Aの大きなトラウマの根本。


高く飛び上がる必要のあるスパイクと、サーブのみ。

にじゅうご→←にじゅうさん



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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー!ありがとうございます!直しときます!!! (2023年4月28日 17時) (レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね!ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (2023年4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと!?ありがとうございます!!今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ!!! (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年5月21日 18時

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